ニューヨーク州ブルックリンのアパートの一室で、ブードゥー教の男性呪術師が、クライアントの女性に”幸運を呼び寄せる”性的儀式を行っている最中に、キャンドルの火がシーツなどに燃え移って火災が発生。火は6階建てアパートのビルの上層階部分などに瞬く間に延焼し、女性1人が死亡、47世帯の住民が被害を受けるなどの大惨事となった。
2月19日の午後6時40分頃、ブードゥー教の呪術師として知られている男性、ネルソン・ピエールさんの4階のアパートの一室で、火災が発生。ピエールさんはこの日、「悪い霊を追い払い、幸運を呼んで人生を変えたい」と願うクライアントの女性をアパートの自室に招き入れ、女性から300ドル(約2万4500円)を受け取った。その「幸運を呼び寄せる」呪術の詳細は不明なものの、ピエールさんと女性は結果的に裸でベッドインし、性行為に及んでいたと思われる。
儀式の一環として、ピエールさんはベッドの周りを取り囲むように置いたキャンドルに火を灯し、幻想的なムードの中で女性とのコトに及んでいた。しかし二人の「儀式」が盛り上がりを見せるのと同時に、キャンドルの火が誤って倒れ、シーツや床に脱ぎ散らかされた服などに燃え移り、初期火災が発生した。
しかしピエールさんは、すぐには緊急通報番号である911をダイヤルせず、浴室のシンクから水を汲み、自力で火を消し止めようとした。さらに悪いことに、火災発生を見たピエールさんのルームメイトが、アパートの廊下に通じるドアや窓などを開け放った。これが外からの風をビル内に招き入れる「ブロートーチ効果」を生み、強風の晩だったこともあって、あっという間に上層階に火が延焼していったという。
この火災、約200人の消防士が7時間かけて未明に鎮火にこぎつけたものの、6階に住んでいた64歳の元教師の女性が死亡、20人の消防士と11人の住人が負傷し、47世帯100人以上の住民が被害を受ける大惨事となった。火事を起こした張本人の呪術師、ピエールさんは負傷したものの、軽症で無事だった。ピエールさんとクライアントの女性は、出火当時の状況について、現在取り調べを受けているが、火事は不慮の事故によるもので、誰も罪に問われることはないだろうとされている。
ニューヨーク市消防局は、今回の火事が完全な人災であったことを示唆、サルヴァトーレ・カサーノ長官は「可燃物のそばに置かれたキャンドル、火災通報の遅れ、開け放たれたドア…この火事は延焼の全ての要素がそろっている。この悲劇から皆も学んでほしい」とメディアに語っている。
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)