一度にたくさんの人の名前を覚えなければならない時、顔と名前だけでなく、その特徴も加えると覚えやすい。台湾桃園県のある不動産チェーン店に勤める女性は、一人の男性顧客との交渉時に、男性が挙動不審で嫌らしい表情に思えたことから、男性の基本資料に「スケベ」と書き加えた。陰で悪口を言われるのは心外だが、資料の中にとどまっているならば、それを知ることもない。しかし、あろうことか、節句時の顧客への挨拶に会社がそのままメールを送信してしまったから一大事である。
事件が起きたのは昨年の端午節(旧暦の5月5日)。台湾では三大節の一つとされる大切な節句で、顧客にお祝いメッセージを送る企業やお店も多い。この不動産会社も顧客宛にメッセージを送ったのだが、グループ送信システムだったため、チェックされることもなく、このとんでもない祝賀メッセージが男性のもとへ送られてしまった。当然、怒った男性が不動産会社を名誉毀損で訴えた。
その後の桃園地検署の審理では、双方和解で決着している。女性従業員が顧客資料を書き換えたことを認め、会社側も資料を確認することなくメッセージを送ったからこそ起きたミスであるとし、男性顧客に謝罪、男性が告訴を取り下げたのだ。
「親愛なるお客様」と通り一遍に送られてくるメールよりは、きちんと名前を書かれているメールの方が、たとえそれがシステム送信だとしても、自分宛に届けられていると感じて、どれどれ見てみようかという気になる。もしこれが、「いつも元気な○○様」や「オシャレ上手な○○様」だったらどうだろう。褒められて嫌な人はいない。ちゃんと自分のことを見てくれているのだと好感を持つに違いない。今回の事件も、それが好感のイメージならば、訴えられることがなかったかもしれない。顧客の特徴を覚えるなら是非、いいところを探してほしいものである。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)