ワールドカップ開催中に南アフリカを訪れた観光客は実に40万人以上、南アフリカの楽器(?)ブブゼラが世界に知れ渡るなど、ワールドカップは大成功かと思われた。しかし、そんな栄光の陰でケープタウン・スタジアムが経営破綻するかもしれないという事実が判明した。
ワールドカップで建設されたスタジアムの中でも、夜のライトアップが最も美しいといわれているケープタウン・スタジアム。しかし、10月6日水曜日、ケープタウン市実行委員長はケープタウン・スタジアム建設費44億ランドを市が請け負うことになる可能性が大きいこと、つまりケープタウン市民の納税が増加する可能性が高くなることを発表した。これはSail Stadefrance Operating Company (SSOC)という会社が30年間の賃貸契約から手を引くと言っているからだ。
手を引く理由としてSSOCは、「ケープタウン・スタジアムを賃貸し続けていると相当額の損失が見込まれるから」と述べている。今年の11月1日からの賃貸に関する未解決事項と、スタジアム経営に関する厳しい規制等を考慮した結果の判断だという。
今年初めに行われた議会で、スタジアム経営、維持費、隣接するグリーンポイント公園の維持費は年間総額4650万ランド(約5億5千万円)といわれている。これはSSOCにとっては予想外の費用だそうで、市との話し合いも決着が付いていないそうだ。
一番の問題はスタジアムの実用性が少ないことだ。南アフリカの国技ともいえるラグビーやクリケットはニューランドという場所にそれぞれスタジアムがあり、歴史あるスタジアムなので他のスタジアムで試合をすることに難色を示している。市ではサッカー以外にボクシングも考慮しているそうだが、他のスポーツに比べると集客力はやや劣るであろう。
南アフリカ政府はワールドカップのためのインフラ構築に100億ランドもケープタウンに投資しているが、市は政府もスタジアム経営に責任の一端はあると主張している。なぜなら、スタジアムの建設場所を決定したのはFIFAだからという理由だ。グリーンポイントの他にも先述したニューランドなど建設場所の候補はあったが、FIFAは容認しなかった。
「ケープタウン市民がスタジアムを有効活用できるかどうかにかかっている」と市は言っているが、ラグビーやクリケット以外で客を集めるのは難しいだろう。「グリーンポイントにスタジアムを造らなければ、ワールドカップはケープタウンで開催できなかっただろう」と市は述べているが、将来性や貧富の差が激しい国民のことも考慮するべきであったことは間違いない。
(TechinsightJapan編集部 近藤仁美)