26日、台湾最大野党である民進党が、ECFA(両岸経済協力枠組協議)の締結合意に対し、住民投票の実施を求めるデモ行進を行った。主催者である民進党の発表したところでは、デモ参加者は15万人に達したという。
ECFAとは、台湾と中国の間の自由貿易協定(FTA)に当たる。
経済成長を続ける中国大陸との関係を強化して台湾経済の活性化に結び付けたい馬英九総統。“6月29日には正式に締結、7月1日には行政委員会を通過させ、すぐに立法院の審議にかける“とした。また、7月1日には、ECFA締結後の経済戦略についても公表することを明らかにした。
民進党の蔡英文主席は、先日、総統府で講演を行った経済評論家の大前研一氏が「ECFAは台湾のビタミン剤」と発言したのに対し、「社会の大多数の人の利益を犠牲にし、大企業が食べるだけ」とECFAには限定的なメリットしかないことを訴えた。
政策にはメリットを享受するものもあれば、デメリットを被るものもある。しかし、これは台湾が台湾として存在し続けられるか、中国にのみ込まれるかという重要な問題であり、住民投票の実施を求めるのも当然である。
そして、その政策のメリットとデメリットも、事前に国民に提示されるべきであろう。
しかし、その事前に提示されるべきものが、締結後の事後報告というのはいかがなものか。更にそれが、経済成長中の中国に乗っかればなんとかなるというような他力本願では、目も当てられない。
ECFAがもたらすものは香港やマカオを見れば、一目瞭然である。
中国市場にのみ込まれ、台湾の主体性はなくなる。失業者も増加。貧富格差も拡大。政治的に台湾の主権も消滅しかねない。
台湾はまさに危機的状況にあるといえるが、現地メディアが行った調査によると、“今回のデモを支持しない・ECFAは台湾に有利である”と答えた人は51%で、“デモを支持する・ECFAは台湾に不利である”の41%を上回った。
今の台湾に、果たして本当にECFAが有効と言えるのか。国民は目先の利益だけを見ていないか。締結を合意した今、その行方を見つめるほかない。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)