海外有名メーカーのスポーツ衣料を代理販売する会社の経営者の妻が、インドネシア人の労働者3人に対し、豚肉を食べることを強要したとして起訴された。
起訴されたのは「信華行服裝體育用品社」の経営者の妻、張雯琳(47歳)で、人材仲介会社に申請し雇用したインドネシア籍の20代女性労働者3人に対し、「一食、食べない毎に給料から500元(約1470円)差し引く」などと脅し、7ヶ月間に渡り豚肉を食べることを強要した疑い。板橋地検署は宗教信仰の不尊重、人権侵害、国家イメージを著しく損なった、などとして、強制罪で起訴、懲役8ヶ月を求刑した。
インドネシアはイスラム教国家であり、イスラム教の聖典コーランには豚肉を食べてはならないと記されている。台北市にあるイスラム教の礼拝堂、清真寺の秘書長は「イスラム教徒にとって豚肉は匂いを嗅ぐのも嫌な程の存在」と話す。
豚は頭から爪の先まで食す台湾文化と比べると飲食の習慣は正反対だ。
そのため、人材仲介会社では台湾人がインドネシア人を雇用する際、特に注意を呼びかけているという。
3人は毎日朝7時から夜12時までの長時間労働で、時間内に仕事が終わらないとペナルティーとして給料から差し引かれ、月8000元(約2万3500円)程あるはずの給料が、実際には500元~1000元(約1470~2940円)しか支払われなかったという。
さらに、台湾で仕事を始めてから、休暇などはなく、宗教活動をする機会も全くなかったようだ。
雇用主の虐待に耐え切れず、3人は昨年2月13日、労働局へ助けを求める手紙を送った。
労働局は警察とともに捜査に入り、今年4月9日、ようやく閉じ込められていた3人の救出に成功した。
張容疑者は3人に豚肉を食べさせたことは認めているが、「豚肉を食べた方が精がつくと思ったからで、脅迫はしていない」と容疑を否認している。
しかし、被害を受けた3人は、「工場では毎日3食中、少なくとも1食は豚肉が出された。給料カットや国へ送り返すなどと脅され、莫大な仲介費が払えなくなるのを恐れて、目を閉じて豚肉を口に放り込んでいた」と話した。
台湾国際労働協会は、これまでにもインドネシア人の労働者が雇用主に豚肉を食べさせらるという噂はあったが、起訴に至ったのは初めてだとコメントした。
3人の救出に関わった労働協会職員によれば、救出時、彼女たちの目は恐怖の色で溢れていたという。長期に渡る心理ストレスから精神状態がひどく不安定になってしまったようだ。
日本同様、少子高齢化の進む台湾では、外国人労働者は重要な労働力と言える。しかし、その雇用環境は劣悪なのが現状である。外国人労働者を適切に受け入れ、管理できる仕組みを構築することが今後の課題と言えよう。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)