一日に10万人もの乗客を乗せる台湾高速鉄道(台湾新幹線)で驚愕の事件が起こった。先月24日、睡眠障害を持つと思われる運転士が、睡眠薬を服用後に出勤し、運転中に昏睡状態となった。列車は298キロの高速下、13分間運転士の操作がない状態で走行した。
列車番号1148。高雄発台北行きの新幹線は突如「恐怖列車」と化した。
午後5時、1分以上運転操作が行われなかったため、警告装置が作動、その1分後、もう一度発したが何の動きもなかったため、コントロールセンターが車掌に通知。運転席に駆けつけた車掌が、昏睡状態の運転士を発見した。
コントロールセンターは直ちに自動運転システムを作動させ、午後5時13分、台中駅に無事停車すると、運転士を交代させた。
高速鉄道は「自動運転システム作動後は、乗客を無事に駅まで送り届けられるよう、車掌が運転室に残り看視した」として、完全な自動運転頼りではなかったことを強調している。
しかし、列車の速度を見ると、背筋が凍る。
当時の列車の速度は標準速度1キロオーバー、停車も標準停車位置の20メートル手前だけだったため、乗客500名がなんら異常に気がつかなかったのは幸いだ。
睡眠障害は現在、日本でも4人に1人が抱えていると言われる問題で、「眠りが浅く、いくら寝ても日中眠くなってしまう」、「明け方にならないと眠くならず、お昼まで起きられない」などの症状が挙げられる。
この運転士は日頃から睡眠薬に頼っており、事件当日も夜中の2時と午前7時に計3粒の睡眠薬を飲んだと話している。
運転士の訓練は容易ではない。訓練期間は1326時間。8ヶ月間にも及ぶ。
日本では、その費用削減のため、訓練費700万を自腹とし、運転士を募集した鉄道会社もある。それには6人が応募、4人の採用が決まっている。それほど魅力ある職業だということだろう。
しかし、2008年に入社したこの運転士は、これまでに5度の遅刻、出勤前の検査でアルコールが検出されたこともあったようだ。
睡眠障害は病気とは自覚しにくいようだが、人の命を預かっているということはしっかり自覚せねばならないだろう。
高速鉄道は重大な過失があったとして、5月3日、この運転士に解雇処分を言い渡している。
(TechinsightJapan編集部 片倉愛)