アジア発!Breaking News

writer : techinsight

【アジア発!Breaking News】花火?発砲?未だ謎。年に一度だけ、満月の夜、メコン川から飛び出す火の玉(タイ)

タイとラオスの国境を流れるメコン川。そのメコン川では、一年に一度、陰暦11月の満月の夜にだけ、「バンファイ・パヤナーク(竜の火の玉)」といわれる火の玉が川から打ちあがる。多い年には一晩で170以上の火の玉が打ちあがるというのだが、なぜこの日にだけ、火の玉が打ちあがるのか、現在も詳しい理由は分かっていない。

タイにおいて陰暦11月の満月の日は、オークパンサー(出安居)といわれる。陰暦8月の満月日のカーオパンサー(入安居)から、僧侶たちは厳しい修行期間(雨安居)に入るが、オークパンサーはその修行期間の終わりの日にあたるのだ。オークパンサーの日は、タイ各地で様々な仏教儀礼が行われる。

そんなオークパンサーの日、タイとラオスの国境に流れるメコン川では不思議な現象が毎年起こる。それは、メコン川の水面から謎の火の玉が上空に打ちあがるのだ。この火の玉をタイやラオスの人々は、「バンファイ・パヤナーク(竜の火の玉)」と呼ぶ。メコン川に潜む竜が、オークパンサーの日に、火の玉を吹くと信じられているのだ。

そして、確かに一年に一度、このオークパンサーの日にだけ、なぜかメコン川の水面から赤い火の玉が飛び出し、上空50~100m以上にまで打ちあがっていくのである。多い年では、170以上もの火の玉が打ちあがることもあるという。

火の玉が見られる場所として有名なのは、タイ東北部ノーンカイ県のメコン川沿いの各地である。そのため、オークパンサーの日には、ノーンカイ県のメコン川沿いには多くの見物人が訪れるとともに(ラオス側も同様である)、テレビ局も生中継でその様子を伝えるのである。

さて、今年のオークパンサーは10月4日であった。この日には、例年同様、多くの人がノーンカイ県の川沿いに見物に訪れた。その数は地元紙によると30万人以上だったという。

そして、多くの見物人がメコン川沿いにて見守る中、18時43分、今年第一発目となる火の玉が、ノーンカイ県ラタナワーピー郡タームアン村沿いの水面より6発打ちあがった。それを見た人々は大きな歓声を上げた。

その後も、ノーンカイ県のメコン川沿いの各地で火の玉が確認され、そのたびに大きな歓声が上がった。今年は合計で50個ほどの火の玉が確認されたという。

この火の玉が打ちあがる理由についてはこれまで様々語られてきた。たとえば、実は単に花火が火の玉に見えるだけとか、ラオス側の兵隊が鉄砲を撃っているのではないかといった人為的な理由がある。

また、川底で発生したガスが、満月の引力との関係で水面に浮かんで、地上に打ちあがるのだという自然現象による説もある。現時点ではこの説が有力だが、その詳しいメカニズムは不明であるとともに、距離の長いメコン川のなかで何故ノーンカイ県を中心としたタイ東北部でしか見られないのかといった疑問に対する説明はつかないという。

火の玉が打ちあがる本当の理由はいまだにはっきりとしていないのであるが、しかし、一年に一度、タイの人々はこの不思議な火の玉を眺めては、神秘的な気分になるとともに、大いに盛り上がり楽しむのである。

なお、過去に見られた火の玉の様子がコチラでアップされていたので、興味のある方はご覧いただきたい。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)