今月25・26日の2日間、バンコク都庁前の広場にて、サオチンチャー(日本語で「ブランコの柱」の意)を祀る式典が実施された。かつては、巨大なブランコを大きく揺すってお金の入った袋を取るという儀礼が盛大に行われたのだが、あまりに危険で死亡するケースも起きたため、現在は各種の儀礼や催し物が実施されるにとどまっている。
「ブランコの柱」を意味するサオチンチャーは、バラモン教方式の豊作を祈願するブランコ祭りを行うため、1784年、ラーマ1世によって建立された。スタット寺とバンコク都庁の間の広場にそびえ立ち、まるで日本の鳥居のような形をしている(写真1)。高さは20メートル以上もある。
(写真1)
では、かつて行われたサオチンチャーでの祭りとはどのようなものであったか。
それは、サオチンチャーにぶら下げられたゴンドラに4人のバラモン司祭が乗り、激しくゴンドラを揺らす(写真2)。そして、サオチンチャーのマスト部分に下げられたお金の入った袋をとるというものである。これによって、インドラ神の降臨を仰ぎ、その年の豊作を祈願したのだ。
(写真2)
巨大なブランコを揺らすこの祭りはスリリングで、非常に人気があった。しかし、かなりの危険がともなうことも事実で、過去には死亡事故も起きたという。そのため、1935年にブランコ祭りは中止され、現在は、サオチンチャーを祀るために、サオチンチャー前の広場にて各種の儀礼や催し物が行われるにとどまっている。
今年のサオチンチャーを祀る儀礼は、今月25・26日に行われた。
初日である25日の朝には、僧侶への托鉢儀礼が行われた(写真3)。僧侶の数、総勢99名。16名の僧侶が読経し、残りの83名の僧侶たちが托鉢してまわったのである。これだけの僧侶が集まると、まさに圧巻である。
(写真3)
そして、25・26日の夜には、サオチンチャーを祀る各種の儀礼や催し物が実施された。サオチンチャーにまつわる歴史や物語が語られ、また、伝統舞踊なども実演されたのである(写真4)。
(写真4)
ステージ周辺には、たくさんの露店も並び、祭りは大いに盛り上がったのである。
現在は、巨大なブランコに乗るという、極めてスリリングな祭りが行われることはなく、サオチンチャーはブランコの柱としての本来の役割を終えている。しかし、年に一度、今でもサオチンチャーを敬うタイの人々によって、盛大に祭りが執り行われているのである。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)