アカ族の住むチェンマイ県ファーング郡フアイサーラー村では、今月8日より4日間にわたって、伝統的祭り「ブランコ祭り」が開催されている。
アカ族は、タイ北部の山岳地帯にて生活する民族集団の中のひとつである。タイの山地民は、ほかにもモン族やヤオ族、カレン族などがあり、それぞれの文化や慣習を保持している。
こうした山地民は、タイ全人口の1パーセントにも満たない少数民族で、主に18世紀半ば以降に中国南西部から移住してきたといわれている。アカ族もその例外ではない。
さて、そんなアカ族が毎年、米の収穫期に実施する重要な祭り。それが、ブランコ祭りである。村の男性たちが設置した巨大なブランコに、あでやかな民族衣装をまとった村の女性が乗るという祭りである。
祭りが行われるのは4日間であるが、初日には祖霊祭祀の儀礼が行われ、実際に人々がブランコに乗るのは2日目以降である。
ブランコは男性たちによって、10メートルほどの木4本を組み合わせて作られ、ブランコを揺らす紐の長さは7~8メートルに及ぶという。そうしたブランコに乗るというのは、それなりの勇気が必要といえよう。
この祭りが行われる理由は諸説あり、当のアカ族自身もそれについては定かではないらしい。
しかし、祭り期間中初日においては祖霊祭祀が行われることから、この祭りが先祖崇拝儀礼の意味合いがあることはうかがえよう。
また、祭りが米の収穫期に行われるという点から、ブランコ祭りが豊作を願う稲作儀礼であることも指摘されている。フレイザーのいう“類感呪術”という儀礼にあたるのだ。
類感呪術とは、求める結果を模倣して行うことによって、その目的を実現しようというものである。つまり、豊作で稲穂が風に揺れる状態を、ブランコの揺れによって表象することで、それを実現しようというのである。
このほかにも、様々な祭りを実施する“意味”があるらしいのだが、そうした本当の意味を特に追求することなく、女性たちは楽しく、かつスリリングにブランコに揺られるのである。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)