タイ東北部シーサケット県では、連日雨が降り続き、水害に見舞われている地域も多い。そして、水害はある男(74)の生活を脅かしている。なぜならば、その男は30年以上土の穴の中に住んでおり、その穴が水に浸かってしまったからである。
その男は、シーサケット県ナームグリアン郡のとある村の土中に30年以上住んでいるのであるが、以前はタイ南部にて仕事をしていたという。
本人曰く、南部で仕事をしていた頃は大酒飲みで、毎晩のように酒を飲んでいた。しかし、ある酒宴の場にて、男は蚊にくわれ、マラリアに感染した。それによって男は、脳に何らかの障害を抱えることになり、以降、雷が尋常ではないほど怖くなったのだという。
体調を崩した男は、タイ南部から地元シーサケット県の2人の兄のもとに戻って生活するようになった。男は、兄2人とともに、畑仕事や魚獲りを行うが、しかし、仕事中にもし雷が鳴ろうものなら、怖くてどうしようもない状態になったのだという。
そこで男は家の近くに、深さ2m、広さ1.5m×2mの穴を掘り、雷が鳴った際にはそこにこもるようになった。穴の中で、雷が鳴り止むのを待つのだ。
その後男はたびたび穴にこもるのであるが、次第に雷が鳴っていない時でもこもるようになった。その穴の中の居心地が非常によくなったのだという。そして現在に至るまでの30年間、男は土中に住んできたのである。
食事の面については、普段は兄たちが、穴の中にいるこの男にそれを提供するのであるが、兄たちがいない場合には、男は穴から出てきて兄の家にて食べるのだという。
また仕事に関しては、兄たちとともに畑仕事や魚獲りを行う。兄たちは88歳と75歳になるが、全員結婚暦がなく伴侶がいない。
つまりは、兄弟全員が力を合わせて生活しているのだ。ただ異例なのは、3人兄弟のうちの1人が土中に住んでいるという点なのである。
現在県では、連日大雨が降り、水害に見舞われている。この兄弟が住む村も同様であり、男の住む穴は水に浸かっている状態だという。連日、嫌いな雷が鳴り響き、しかも生活の場まで奪われたこの男は、非常に厳しい状況にあるといえよう。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)