ある男が自分のお気に入りの車を中古車センターから盗んだ。しかしこの盗んだ車、逃げる途中にガソリンがなくなってしまう。そこでとった男の行動とは。
男(32)は現在無職である。そして、この男は、三菱のニューランサーが大好きだった。そこで、日ごろから車を眺めに、よく中古車センターへ足を運んでいた。
そんなある日、見知らぬ客が金(保証金)を支払い、その大好きな車を購入しようとしている。その現場に遭遇した男は、どうしても車を自分のものにしたいという衝動にかられる。
そこで男は、客がいなくなったときに、ふらりと店内に入り、すでに前金を支払い済みであることを告げて、車に乗り込んだ。男の作戦は見事成功し、彼は自宅へ向かって急ぎ車を走らせた。
しかし、車は10kmも走らないうちに止まってしまう。というのも、中古車センターでは、盗難対策のため、売っている車には少しのガソリンしか入れておかないようにしていたのだ。
突然止まってしまった車について男は、ガソリンがなくなったとは思わなかった。車が故障してしまったと思いこんだのだ。そこで、男は仕方なく車を車道に止め、自宅へと帰った。
しかし、帰宅後も男は車のことが忘れられず、その日は眠れない夜を過ごす。車がなくなるのが恐ろしかったのだ。
そこで、男は朝を迎えるとすぐに、車を止めた場所へと急いだ。そして、車が無事あることを確認すると、男は中古車センターへ連絡し、車が故障した旨を伝えるともに、取り替えて欲しいと依頼した。
一報を受けた中古車センターは、もちろんそれが盗まれたものであることは分かっていたので、車と男の場所を聞き出すとともに警察に連絡をいれ、そしてついに男は御用となってしまったのである。
男は過去に麻薬による逮捕歴があり、現在の警察の取調べに対してよく分からない返答をしているという。
自分の好きな車を日々思い続け、それを(窃盗というかたちではあれ)ようやく手に入れた挙句に、間抜けなかたちで逮捕されてしまった犯人。当然、窃盗行為は良いことではないが、しかし、盗んだ車を運転している約10kmの間の男の気持ちを想像すると、なんとも切ない思いにかられるのは執筆者だけだろうか。執筆者は犯人の顔を知らないが、イメージ上では、運転しているときの犯人は少し笑っている。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)