タイでは“入安居(カオパンサー)”を迎えるにあたり、各地で儀礼が実施されている。ここでは、バンコクのとある寺で行われた儀礼の様子をお伝えする。
タイの人々はこの日を迎えるにあたり、各所で売られているロウソクなどの僧侶への献納物を準備し、それを持って寺に赴く。
寺に行くと、上の写真のように、僧侶たちは壇上に並んでいる。在家者たちは、その僧侶の前に座し、三回額を地面につけて礼拝する。
そして、僧侶の読経が開始され、在家者たちもそれに従う。こういったとき、読経できない執筆者のような人間は、少し手持ち無沙汰になるが、手を合わせていればまったく問題はない。
そのあと、僧侶は説法を始め、在家者はそれをありがたく拝聴する。このときも、何を言っているのかわからない場合、少しの手持ち無沙汰が生じる。それでも、静かに聴いていれば、これまた何の問題もない。
そして、それが終わると次に在家者は用意していたロウソクなどを僧侶に献納する。ここでは、献納の仕方に何か特別なルールでもあるのではないかという思いにかられ、少し緊張する。しかし、ちゃんと誠意をこめれば滞りなく終えることができる。
それを終えると今度は、写真のように、僧侶の読経にあわせて水を注ぐ儀礼が行われる。これは、亡くなった親族たちに対する儀礼である。僧侶の読経と水を注いでいる間、先祖たちと通信することができると信じられているのだ。
このときは、執筆者も先祖への日々の感謝と、今後の健康などを願う。ただ、少しだけ頭をよぎるのは、タイの儀礼において日本語で願懸けしてもいいのだろうかということである。しかし、先祖は日本人なので、タイ語で願懸けしても通じないであろうという推測の上に立って、日本語で願懸けをする。
ちなみにこれは余談だが、普段タイの仏像に願懸けする際には、タイ語で行うようにしている。それは、日本語だと通じないのではないかという憶測にのっとっている。
そして最後に、僧侶が在家者に向かって聖水を振り掛ける。これによって、悪いことを取り払うという意味があるのだ。
こうして、午後の儀礼は終わるが、夜になると、ウィアンティアンと呼ばれる儀礼が行われる。それは、ロウソクと線香、花をもって本堂の周りを三周時計回りにまわるというものである。
揺らめくロウソクの火を手に、多くの人々が寺を回る姿は、圧巻であり、かつ幻想的だ。そんな幻想的な夜を終えると入安居を迎え、僧侶たちはこれから厳しい修行期間に入る。
(TechinsightJapan編集部 若曽根了太)