映画館で、「立見席しかありません」と掲示されていることがある。何のことはない、空席はないが、端や後ろで立って見るならかまわないということである。中国の格安航空会社が、安価な「立見席」の販売許可を求めているという。乗客は飛行中、機内通路に立っていることになるが、料金はその分安くなるという。
果たして安全性は約束されるのか? プランを立てた春秋航空は、政府のゴーサインを待っている段階だが、許可はスムーズに下りるだろうと相当の自信を見せている。というのも同社によれば、飛行機の「立見席」というアイデアはそもそも、張徳江副首相から投げかけられたものであるらしい。
春秋航空の大半の飛行機はエアバスに発注したものである。春秋航空では既にエアバスから、「立見席」(観ることが目的ではないが)の安全性に問題はないとの見解を得ているという。ということは離着陸時など、シートベルトサインが点灯している間の対応についても検証済みなのだろう。
チケットがその分安価ならば、座席がなくとも、荷物を預けることができなくとも、また食事が出なくても乗客の納得は得られるはずだ。乗客はいわば路線バスに飛び乗るように気軽に、飛行機に乗ればよい……
飛行時間が10時間を超えるような国際線はともかく、身近な例に拠るなら、羽田~富山で1時間程度、羽田~大島にいたっては30分程度ではなかろうか。なるほどその程度の時間ならば立っていても苦痛は少ない。だが、機内通路の幅というのはふつう、人ひとり通るのがやっとだろう。そこが立った乗客で塞がれれば、座席(「立見席」でない)への飲み物の提供なども難しくなりそうだ。その分、座席のほうの料金も値下げを余儀なくされることになりはしないか? プランにはそうしたリスクも織り込み済みだろうか。
(TechinsightJapan編集部 田中箇)