マーガリンの容器とトマトソースの瓶、そしてティーバッグがいくつかあっただけで他に食料は見つからなかった。ローラさんの銀行口座には3000ポンド(約58万3000円)の預金があったものの、現金を引き出すには町の中心部まで行かなければならず、精神的な疾患を持つローラさんにとって、行動に移すことが難しかったのではないかとニッキーさんは話している。
ニッキーさんは審問で、ローラさんと最後に直接会ったのが2009年で、SNSでのやり取りは2014年頃から途絶えたと証言した。一方でロイさんは、父親の健康状態が悪化していることを伝えるため、2021年1月頃からローラさんとの接触を試みたという。
ローラさんの家族は、彼女のケアをするはずだった地域の社会福祉サービスや精神保健チームに対して、3年半もの間ケアがなかったことについてこのように批判した。
「ローラに何らかのケアをする義務を負っていた人たちは皆、彼女から手を引いてそのまま忘れてしまったようです。ローラは見捨てられ、息を引き取るまで放置されてしまいました。」
また、2014年にやつれ切ったローラさんを心配したアパート管理組合の職員が、社会福祉局に連絡したところ、ローラさんのもとに同局から地元のフードバンクや支援チームの連絡先が書かれた手紙が送られた。しかし同局は、2週間経ってもローラさんからの返事がなかったため、支援する予定を打ち切っていた。
ローラさんの遺族の代理人を務める弁護士のイフティカール・マンズール氏(Iftikhar Manzoor)は「非常に多くの危険信号が見落とされてしまった」として、次のように述べた。
「非常に悲劇的な事件です。関係機関のシステムが適切に機能せず、弱者である彼女の命が失われてしまいました。家族は何度も連絡を取ろうと試みました。ローラさんは、アパートの床の上でひとりぼっちで亡くなる運命ではなかったはずです。支援付きの施設に入所させるべきでした。」
なお、審問は今後も続く予定だ。
画像は『BBC 「Family’s ‘horrifying discovery’ of body in flat」(Hudgell Solicitors/PA Wire)』より
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)