ヒューイー君は小さな体で精いっぱいの頑張りをみせた。
QEUHで行われた検査では、ヒューイー君の血液が酸性に変わっていることや血液が固まらない状態になっていることが判明し、医師らはその原因を探るために約12時間をかけて手術を行った。
クリスティーンさんは医師に、もしかしたらヒューイー君は身体が麻痺してしまうかもしれないこと、心臓発作を起こし脳に障がいが残るかもしれないこと、肝臓と腎臓が損傷を受けて肺が虚脱し心筋に炎症が起きていることなどを伝えられたそうで、当時の心境を「まるで悪夢のようで、12時間が12年のように感じました」と述べている。
こうして長男(14歳)、長女(9歳)、次女(6歳)の3人を親戚に預け、「なんとか助かって欲しい」と祈りながら病院で過ごしたクリスマスの夜、夫妻は医師から息子の容体急変の原因がボタン電池の誤飲であることを知らされた。
クリスティーンさんは、その夜のことをこのように語っている。
「医師が看護師2人を連れて病室にやってきたのですが、3人はそれまでずっと泣いていたような顔をしていました。外科医は『誤飲したボタン電池が食道に留まり、心臓にまで穴が開いていました。これまでに同じケースは一度だけありました』と教えてくれました。」
「私は外科医を脇に連れ出すと『私はあの子の母親です。真実を伝えて下さい』と訴えました。すると医師は『もし息子さんが山を乗り越えたとしても、ただ存在しているだけの状態になるでしょう。今後はなんの反応も期待できません』と言ったのです。」
「息子が機械によってのみ生かされていると知った私たちは、事故から2日後の26日、生命維持装置を外しました。亡くなる前の数時間は、息子の身体や頭に付いた血をきれいに拭き、息子を腕に抱いて『愛している』と伝えました。」
「私はあの日、腕の中で息子が逝ってしまうのを感じました。あれこそ生き地獄です。あのつらい心の痛みを表す言葉などこの世には存在しないのです。」
実はヒューイー君の死後、夫妻はサルのおもちゃに使われていた3つのボタン電池のうち、1つがなくなっていることを発見したという。おもちゃは約2500円(16ポンド)で、腹部を触ると音が出るなどの機能が付いていたそうだ。
ちなみにヒューイー君の心臓には5ペンス硬貨(直径1.8センチ)ほどの穴が開いていたそうで、クリスティーンさんは「ボタン電池は光ったり音が出たりするクリスマスカードやおもちゃ、電動歯ブラシなどありとあらゆるものに使われています。ヒューイーの苦しみや、私たちと同じつらい思いを他の誰にも味わって欲しくないのです」と訴え、ボタン電池の販売を中止するよう請願書を作成し、署名を集めている。
なお誤飲したボタン電池は食道に停滞すると、早くて2時間で重度の化学やけどを引き起こす。またそのまま放置すると食道に癒着して放電し、粘膜に穴が開くなどして重症化する。『Child Accident Prevention Trust』によると、イギリスでは1年間に少なくとも子供2人がボタン電池の誤飲で亡くなっているという。
画像は『The Sun 2022年2月7日付「TRAGIC TOT Our baby died after swallowing a battery from a toy – it burned a hole in his heart」(Credit: The Scottish Sun)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)