マークは「驚かせてあげたい」という理由でリフォーム中の家を見学させてくれなかった。
そんななかキャロリンさんは、マークから家の購入とリフォームにかかる費用の資金繰りがうまくいっていないことを聞かされ、2万6000ポンド(約400万円)を貸すこととなった。これを皮切りに数か月間で70回ほどお金を貸す羽目になったのだが、その額は合計85万ポンド(約1億3100万円)にも上った。
実はマークは家を購入しておらず、キャロリンさんから借りたお金を全て自分の懐に入れていた。のちにキャロリンさんは「恋に夢中になっていたせいで、全く疑う余地がなかった」と語っている。
またマークは、自分がMI6のメンバーだとキャロリンさんを信じ込ませるためグロスタシャーにある小さな飛行場へと連れて行き、プライベート機に乗せるなど彼女が喜ぶような演出をした。
「自分が所有する飛行場」と語るマークだったが、実際はプライベート機を操縦していたジェイムズ・ミラーさん(James Miller)が経営する飛行場だった。キャロリンさんはこの時も全く疑うことなく「いずれ貸したお金は返してくれるだろう」と思っていたそうだ。
ところがしばらくしてキャロリンさんは、購入した家についてマークから「MI6の仕事をしている間はこの家は十分な安全が確保できない」と言われ、タウンハウスに2人で住むことにした。しかしマークは相変わらず家を空けることが多く、キャロリンさんは2人の関係を誰にも相談できないことでうつ状態になり、孤独の淵に立たされて自殺まで考えたこともあったという。
そんな生活に我慢ならなくなったキャロリンさんは、飛行場で会ったジェイムズさんについてマークが「仕事仲間」と話していたことを思い出し、ジェイムズさんに連絡をとった。するとマークが詐欺師であることを聞かされ、ジェイムズさんも被害者だったことが明らかになったのだ。
マークの本名はマーク・アクロム(Mark Acklom)で、16歳の時に父親のクレジットカードを盗みプライベートジェット機でパリに渡り、友人にシャンパンを振舞ったそうだ。その後彼は犯罪に手を染めるようになり、詐欺罪によりイギリスとスペインで収監されたこともあった。
しかもスペイン人の女性と結婚し2人の子供までおり、そのうちの1人をキャロリンさんに「姪っ子だ」と紹介して会わせていた。ことの次第をジェイムズさんから聞かされたキャロリンさんは、すぐさま警察に通報した。
当時のマークは英国家犯罪対策庁の10大指名手配逃亡者のリストに入っており、ついにスイスで逮捕され、2019年2月にようやくイギリスに送還された。同年8月にマークは裁判所に出頭し、5件の詐欺で有罪となり懲役5年8か月の判決が下された。
キャロリンさんはメディアのインタビューに応じ、「彼の魅力とジェームズ・ボンドのような話に騙された自分が恥ずかしくてたまらない」と明かしている。
ちなみにキャロリンさんはその後、相談に乗ってもらったジェイムズさんと交際に発展し、現在は2人でスコットランドに移り住み幸せに暮らしているそうだ。
画像は『The Sun 2021年4月19日付「OH VOW My conman ‘MI6’ fiancé left me suicidal & took £850,000 – all I had left was the wedding dress I planned to marry him in」(Credit: Not known, clear with picture desk)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)