そのうち叫び声を聞きつけた近隣住民が駆けつけてきた。リアム君の様子を見て「救急車を待っている場合ではない」と悟った隣家の人が、車で近くの私立病院に搬送してくれることになった。
病院に着くまでの10分以上もの間、車内ではブラッドリーさんが救命措置をしていたが、みるみる青くなっていくリアム君の顔色に夫妻は最悪の結果を覚悟したという。病院に到着後は医師らが12分間の救命措置を続けたが、それでもリアム君の様子は変わらなかった。インターンのタニア・ネル医師がリアム君の死を宣告しようとした時、まさに奇跡が起こったのだ。
自身も3歳の息子をもつネル医師は、後に当時のことについて「私が駆けつけた時、男児には生存の可能性がみられませんでした。溺死のケースをあまり扱ったことがなかったため他の医師に相談しようとしたその時、脈が動いたのです」と語っている。
その間、待合室にいたブラッドリーさんはロウリカさんや娘に「これから3人家族になってしまうだろう」と話していたそうだが、ロウリカさんは覚悟をしていたものの祈り続けるしかなかった。そこへネル医師がリアム君の心臓が動いたことを告げに来たという。
ただしリアム君の症状は依然として危険な状態だったため、ヨハネスブルグのガーデンシティ病院へヘリコプターで搬送されることとなった。ショックを受けたままの家族に対して、「この状態での運転は危ない」という近所の人の好意で、ヨハネスブルグの病院まで送ってもらったそうだ。
ヨハネスブルグの医師らは、脳のダメージを防ぐためリアム君の体にバブルラップ(気泡緩衝材)を巻いて体温を34度に設定した。その後5日間は人工的な昏睡状態に置かれたが、6日目に目をぱっちり開けて体を動かそうとした。スノー一家はリアム君が生きていることに安堵したが、脳にどれほどのダメージを受けているかわからないという不安定な状態だった。しかし3歳のリアム君は日に日に変化を見せ、事故から2週間後には退院できるほどに回復した。
リアム君の脳はなんと損傷を受けておらず、言語療法士や作業療法士、理学療法士からも問題ないと言われたという。心停止から10分以上経過すると助かる見込みはほとんどないと言われるだけに、リアム君の生存は奇跡に近い。
ネル医師はリアム君が乗った医療ヘリを見届けた後、対応にあたった緊急医療チームのメンバーらとともに涙したそうだが、リアム君が回復後に姿を見せに来た時も歓喜のあまり涙が止まらなかったそうだ。
一方で、家族を失うことを覚悟するほどのショックを受けた夫妻とケイトリンちゃんはカウンセリングを受けた。特にケイトリンちゃんは、弟リアム君の顔が青くなったことに精神的ショックが大きかったもようだ。夫妻によると、リアム君の退院後にケイトリンちゃんは「プールで寝ちゃだめよ」と伝えたそうで、さらに挨拶するだけの関係だった隣人との付き合いも事故を機に変わっていったという。
ロウリカさんとブラッドリーさんは愛する息子の奇跡的な生還、すべてがハッピーエンドの状況に、今ではお互いのほっぺたをつねって現実であることを確かめたくなるそうだ。
画像は『Health24 2019年7月16日付「3-year-old Gauteng toddler’s miraculous recovery after heart stops for 20 minutes」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)