困ったものだと嘆きながらも、やむを得ないと同意する他の地区の教師たち。長きにわたり時計の読み取りは小学校におけるひとつの大事な教育であったが、パソコン、スマホの普及によりその機会の重要性は奪われていった。
また、シェリル・クインさんというある地区の教師も「真剣そのものの試験でありながら、教室の時計の読み方がわからない子がいる。この問題は数年前から感じていました」と語ると、各学校長により組織されるASCL(Association of School and College Leaders)のマルコム・トローブさんは「今の子たちは伝統的な文字盤や針で時刻を読むほど賢くないのですよ」と嘆く。デジタル時計に替えるメリットはただひとつ。各種試験において生徒たちがストレスを感じることなく試験に集中できることだが、トローブさんは「試験の最中に時間がわからなくて困るなどと訴えるようでは先が思いやられる」と言いたげだ。
そして保守党員の下院議員で教育特別委員会「Commons Education Committee」の議長を務めるロバート・ハーフォン氏は、その流れに妥協してしまうことについて「ある種の危機感を覚えます。それでもすべての子供たちにアナログ時計の読み方を教えるべきだと私は思いますね。時計から数字を学ぶことはとても重要なことですよ」と語る。時間という数字の持つ独特な秩序、世界時計の仕組み、そんなものを知るにはやはりアナログ式時計に接することが一番。たとえばテスト終了時刻が11時15分で現在10時48分だとしたら、アナログ時計を読める者なら一瞬にして「残りあと30分弱」と理解できる。
しかも世界を旅すればアナログ時計ばかりという国もザラで、文字盤・長針・短針で時計を読めるようにしておく方が楽しいこともある。ロンドンといえば、文字盤にあるローマン体の数字がそれは美しいウェストミンスター宮殿(英国国会議事堂)の時計台“ビッグ・ベン”が有名である。こういう素晴らしい財産がありながら「時刻はやっぱり数字で表してもらわないと」とは実にもったいない話である。
なお、教師たちがここでこだわっている真剣なる統一試験とは「GCSE」と「Aレベル」のこと。義務教育(5歳~16歳)を修了するとGCSE(General Certificate of Secondary Education)という統一試験を受験するもので、大学進学を考えている者は8~10科目を受験する。またAレベル(General Certificate of Education, Advanced Level)とは、GCSEに続くシックスフォームという2年間の高等教育で得意な3~5科目を勉強した者が受ける統一試験のことである。アナログ時計が読めなくて大学受験、学力試験もないだろうという気がしないでもないが、それは言い過ぎであろうか。
画像は『Sky News 2018年4月25日付「Teachers claim A-level and GCSE students cannot read analogue clock faces」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 Joy横手)