相手の声を少し聞き取ることはできても意思伝達には頭を少し揺らすことしかできなかったという。
その後、ついにドナーが見つかり2度目の移植手術を受けることになった。移植を受ける前にアモンさんは体内の血液を全て入れ替えなければならなかった。そして今年1月15日の午後一番に始まった手術は、翌16日の早朝に無事終了した。それは血管柄付複合組織移植は慢性的な拒否反応が起きた場合でも(顔と手の場合に限る)再移植が可能であることを、世界で初めて症例として示すものだった。
しかし油断は禁物で、アモンさんは拒絶反応を起こす可能性のある抗体を排除するために血漿(けっしょう)浄化療法を含む免疫治療を続けなければならなかった。それだけではなく、今のアモンさんは精神的なサポートと言語療法を受けており、それは長期間に及ぶものとみられている。
アモンさんは現在43歳だが、今回移植した顔面は22歳男性のものだったため、随分と若返ったように見える。アモンさん自身もフランスのテレビ番組で「私は43歳だがドナーは22歳だったので、20歳くらいに若返ることができました」と少し冗談めいた発言をしていた。
今回の移植手術について、アメリカで顔面移植を行っているハーバード大学のボダン・ポマハック医師(Dr. Bohdan Pomahac)は「今後、患者が増えることによって同様の移植手術が一般的になるだろう」と話している。
画像提供「ASSISTANCE PUBLIQUE HÔPITAUX DE PARIS UNIVERSITY HOSPITAL OF ÎLE-DE-FRANCE」(Service presse AP-HP)
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)