タイにある「ブーンロッツ・ゾウ保護区(Boon Lott’s Elephant Sanctuary、以下BLES)」は600エーカー(東京ドーム約52個分)の美しい自然の中に作られたゾウたちのサンクチュアリである。保護区にやってくるのは、長年人間に酷使され、現役を引退してやってくる年老いたゾウがほとんどであるが、ビーチに捨てられさまよっていた犬の“パンケーキ”が3年前にBLESの仲間に加わった。動物専門サイト『The Dodo』が伝えている。
BLESにやってくるゾウたちの寿命は決して長くはない。2016年夏、長年観光客を背中に乗せて働いてきたゾウの“サオノイ”が、保護区に来てたった1か月で60年の過酷な生涯を終えている。
BLESの創設者であり、CEOでもあるキャサリン・コナーさんは「保護区でゾウが亡くなることは珍しくありません。あの夏、疲れ切ってやってきたサオノイは、やっと穏やかな生活を手に入れたにもかかわらず、立つことができなくなり地面に倒れこみました。そんなサオノイの最期に寄り添ったのは、同じように人間のために働き、使い物にならなくなって保護区にやってきた“ブーン・ソング(Boon Thong)”というメスのゾウでした。ブーン・ソングはサオノイの隣に立つと鼻を使って優しく撫で、慰め続けたのです」と当時を振り返っている。
その夏から1年半が過ぎた今年2月。今度はブーン・ソングの体調に異変が現れた。すっかり衰弱し動き回ることがなくなったブーン・ソングの異常をいち早く察したのは、3年前に仲間として迎えられた犬の“パンケーキ”だったという。
キャサリンさんは「ブーン・ソングがサオノイの最期を見届けたように、今度はパンケーキがブーン・ソングのそばに寄り添ったのです」と語ると、こう続けた。
「観光客を約30年間も背中に乗せて働いたブーン・ソングは、あと少し働いていたら背中を骨折していたという状況でここにやってきました。保護されて5年間でしたが、BLESでブーン・ソングはやっと自由を知りました。この広い土地で好きな場所を見つけ、リラックスする姿を何度も見かけたものです。ブーン・ソングにはお気に入りの木があって、そこに出向いてはその木を引っ掻き、小川が流れる大好きな場所に行っては自分の身体に泥をなすりつけて楽しんでいました。倒れてしまうまで、まるで自分の人生を取り戻すかのように精一杯生きていたと思います。」
ブーン・ソングの最期の1週間は、