夜の滑走路ならまだ光が頼りになったかもしれない。だがそのアクシデントは日中に起きてしまった。悪天候につきフロント部分が完全に破壊され、オートパイロット機能を失ってしまった旅客機のコックピットで、パイロットは盲目も同然という状態での着陸を強いられたのだ。このほどトルコの空港で…。
大粒で激しい雹(ひょう)が叩きつけたことによりフロント部分に大変なダメージをくらったのは、トルコのイスタンブールに拠点をおく格安航空会社「アトラスグローバル(AtlasGlobal)」のエアバスA320型旅客機。アレクサンダー・アコポフ氏が機長を務め、トルコの南に位置するキプロス島に向けてイスタンブールのアタテュルク国際空港から飛び立つも、約10分でひどい悪天候に見舞われた。
大粒のひょうでコックピットの窓にはヒビが入り、気象レーダーやアンテナなどの重要な計測機器が収められている機体のいわゆる“鼻(レドーム)”の部分はぐしゃりと潰れ、あろうことかオートパイロットも無効になってしまった。127人の乗客を乗せた同機は引き返しを決定。アコポフ機長が管制塔に着陸の優先権を要請したところ、そちらも悪天候につきクローズの状態であったが非常事態につき許可が下りたという。
アコポフ機長は「私は30年飛び続けているベテランですが、今回ばかりは本当にハードな経験でした。とにかく皆さんが無事でいてくれて良かった。それだけが心配でした」と話している。空港では職員ほか多くの人々が固唾を呑んで見守っており、同機は機体をかなり右に傾げた状態で強くバウンドしながら着陸した。その後も滑走路から逸れずに停止できるものか、目視が不可能なだけに最後の最後まで油断できない着陸であった。客室では悲鳴や叫び声があがっていたという。