アメリカの高校チアリーディング界はコンテストの優勝、有名大学への進学をかけた、いわば「人生の勝ち組」を目指す真剣な闘いの世界となる。足を引っ張られないためにも技術的に劣るメンバーには荒療治しかない…!? 股関節ほかのダメージを想像させる痛々しいトレーニングの様子が米コロラド州のある高校から動画で流出し、警察沙汰になっている。
問題の動画が流出したのはデンバーにある公立イースト高校(East High School)で今年6月のこと。そこで泣き叫んでいるのは被害にあった部員のうちのひとりで、8月の入学および入部が決まっているため6月に行われたサマーキャンプにも参加していた新1年生のアリー・ウェイクフィールドさん。彼女の身体、腕や脚を先輩であろう数名の部員ががっしりとつかんでおり、アリーさんは無理やり脚を前後180度に開くよう強いられている。
「痛い、お願いだからやめて!」と絶叫するが、オゼル・ウィリアムズ・コーチは「手を休めるな」と命令。その状況はしばらく続くが、泣き叫ぶアリーさんをクスクスと笑う者までいるようだ。脚や股関節を痛めたアリーさんは自分の身に起きたことを両親に打ち明けて病院へ。母親のクリステンさんはその翌日、医師の診断証明書を添えて学校の体育部長を務めるリサ・ポーターさんに「ウィリアムズ・コーチの指導方法は度を越しています」と訴えた。話し合いにはコーチはもちろん校長や体育部長も出席したが、チアリーディング部は本年度もウィリアムズ・コーチでいくという結論に親子は深い失望感を抱いたという。
しかしウィリアムズ・コーチに対する批判や苦情は、実は数か月にわたりほかの保護者からも舞い込んでいた。やがて問題はメディアに持ち込まれ、騒動となったことで初めて動画を見たというデンバー市教育委員会のトム・ボアスバーグ教育長は、「こんなことが行われていたことに驚きました。教育長であるばかりか高校生の娘が2人いる父親として、この乱暴な指導方法は不愉快極まりない許し難いものです」と怒りをあらわにした。