口部分が大きく裂け顎がなく、開いた口は常に出血しているという深刻な遺伝的障がいを持って生まれた女児。身内のほとんどが「みっともない」と3歳になる女児の両親との縁を切った。両親はその辛い胸のうちを『Siberian Times』や英『Mirror』に語っている。
エレナ・シュペングラーさん(46歳)は、妊娠7か月目でダリナちゃんを出産した。出産後、すぐに異変に気付いたエレナさんは我が子に会いたいと看護師に伝え、保育器に寝かされたダリナちゃんを見て思わず目の前が真っ暗になり気絶してしまったという。
ダリナちゃんは顔半分が未形成で顎が無く、口の部分が顔いっぱいに裂けていた。ショックを受けたエレナさんは医師から「子供は病院に置いていきなさい」と指示されたという。しかしその頃、交通事故で別の病院に入院していた夫ユーリーさんが我が子を見て容姿など全く気にせずありのままを受け入れたので、エレナさんは夫とともにダリナちゃんを育てて行く決心をした。
ところが夫婦の身内からは心無い態度を取られた。「そんな子供みっともない」と連絡を絶たれ、店で偶然会えば自分の子供たちに「あの子の顔を見ちゃだめよ」と告げてそそくさと立ち去った。またダリナちゃんの口の出血を見て、「あの夫婦が子供を虐待しているのでは」と警察に通報されたこともあったという。
シベリア中部クラスノヤルスク地方の小さな村に住んでいた夫婦はダリナちゃんへのこうした侮辱が耐えられず、親族や友人らを避けるように引っ越した。現在は家族3人で暮らしており、エレナさんは仕事をやめて毎日ダリナちゃんの世話をしているが、夫婦はダリナちゃんをどこにでも連れて行く。しかし幼稚園からは「他の子供が怖がるから」と受け入れを拒否され、週に一度、福祉サービスから2人の教師が自宅訪問している。
「『マスクをさせればいい』と言う人もいますが、『見たくないなら見なければいい。私たちはありのままの娘を受け入れているんだ』と言い返します」とユーリーさんは語る。
エレナさんは「娘の口は大きく裂けているのでいつも出血しています。娘の痛みを感じるとやり切れません。顎がないので固形の食べ物は一切口にできず、液体のみで食事をとっています。本当は親族とも決別したくはなかったのですが、私たちをサポートしてくれるのは私の姉と、ダリナの年の離れたきょうだい家族だけなのです」と辛い心境を吐露した。