インド中部ジャールカンド州のジャムシェドプールに暮らすサダム・フセインさんは、その名を25年前に祖父から名付けられた。祖父のことは好きだったが、この名前が原因で大学卒業後に苦難の道のりが待っていた。
タミル・ナードゥ州にあるヌーラル・イスラム大学(Noorul Islam University)で海洋エンジニアを学んだフセインさんは、成績は常に優秀だった。しかし就職活動を始めるとことごとく面接を拒否され、25歳になる現在も仕事は見つかっていない。フセインさんはこれまで40回近くもの船舶関係会社の面接を拒まれているという。
フセインさんは当初、周りの仲間たちが次々と安定した仕事に決まる中で自分だけが不採用続きという理由がわからなかった。そこで面接を受けた会社の人事課に訊ねてみたところ、「サダム・フセイン」という名前のせいと分かったのだ。
正確に言えば、フセインさんの名前は「Hussain」と綴り、元イラク大統領は「Hussein」である。しかし発音が同じであるために「疑惑をそそるような名前の持ち主と一緒に仕事をすることは問題だ」として、どこの会社もフセインさんの採用を渋るそうだ。
デリを拠点にしている人材派遣コンサルタント会社「チーム・リースサービス」の最高幹部は「海洋エンジニアの仕事は頻繁に出張もあります。国境を越える際に国境警備隊や空港当局に疑問を持たれると、すぐに調べられます。常に目を付けられてしまうのであれば、本人もそうですが雇用側もスムーズに仕事が進まなくなります。彼を雇うことはリスクを背負うのと同じことです」と話している。
フセインさんは自分の名前が就職の弊害になっていることを知って、パスポートや運転免許証、有権者IDなどを「サジド・フセイン」に変更したという。これで面接を拒否されることもなくなるかと思いきや、ある会社が大学卒業証明書の名前も変更するように求めてきた。フセインさんは大学へその要請をしたものの、大学側に「第10学年及び第12学年(高3相当)修了共通試験の証明書の名前を変更しないと、卒業証明書の変更はできない」と拒否されてしまう。
そこでフセインさんは後期中等教育中央審議会に名前の変更を依頼したが、すぐに対応してもらえなかった。そのためジャールカンドの高等法院へ出向き、名前の変更を訴え出た。
ところが裁判所では、名前の変更に関して無節操な人たちがやたらと名前を変更したがるため許可を出すことに慎重になっている。フセインさんはここでもすぐには許可をもらえず、5月5日のヒアリングまで待たなければならないそうだ。
周りの仲間がすでに仕事を得て安定した暮らしをしているのを見聞きするフセインさんは、夜も眠れない日があるといい「誰かの犯罪で、全く無実の私が犠牲になるようなものです」と嘆いている。人の名前というものが、いかに人生を左右させるかということを実感せずにはいられない。
出典:http://www.hindustantimes.com
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)