現在放送中の連続ドラマ『お義父さんと呼ばせて』(フジテレビ系)でヒロインの兄役を演じている俳優・中村倫也(29)。これまで数々の映画に出演し、昨年末の舞台『ライチ☆光クラブ』では主演を務めるなど着実に経験を積んできた。その中村が、新作映画『星ガ丘ワンダーランド』(3月5日公開)で主演する。共演者は新井浩文、佐々木希、菅田将暉、杏、市原隼人、木村佳乃、松重豊という豪華陣だ。「カメレオン俳優」と形容される中村倫也に話を聞いた。
「星ガ丘駅」の駅員として働いている温人(中村倫也)は、届けられる落とし物の持ち主を想像して似顔絵を描くのが日課であり楽しみであった。そんな温人に、20年前に家族の元から去って行った母が死んだという連絡が届く。母の謎の死をきっかけに、止まっていた時間が動き出す―。
■演じた温人は苔みたいな人物
―中村さんが今回演じた温人(はると)はどんな人物だと思いますか。
中村:温人というのは、僕にとって苔(コケ)みたいな人物ですね。非常にささやかでひっそりと自生している。もうひとつ(の特徴は)、見えない鎖みたいなもので過去につながれている。その鎖に気づいているかも分からない。悪い人間でもないですけど、特別いい人間でもない、という感じですね。
―今作は「家族」がテーマのひとつだと思いますが、中村さんご自身のご家族について教えてください。
中村:両親と兄貴と俺ですね。あんまりしゃべると怒られちゃうんですよね(笑)。母は照れ屋なんで。いろんなことを応援してくれるいい両親です。舞台も観に来てくれます。
―家族に関して孤独な温人とはだいぶ違いますが、役作りはどのようにされましたか。
中村:(自分と)生い立ちや家庭環境が違うと結構大変で、想像力をすごい使わなくちゃいけないので、いろんな準備が必要でしたね。ただ役としてそこに存在しないといけない映画なので、撮影に入る前に準備したことを、撮影に入ったら全部捨てて、そこでやる(演じる)作業が必要でしたね。
■役者の醍醐味は面白い人と出会えること
―中村さんにとって役者の醍醐味とは何でしょうか。
中村:面白い人といっぱい出会えることですね。面白い人と面白いことができると最高ですね。
―今回錚々たるキャストと共演されていますが、特に楽しみだった方はどなたですか。
中村:全員楽しみでしたね。市原(隼人)くんと新井(浩文)さんは完全に「初めまして」でした。他の方は仕事もしたこともありますが、松重(豊)さんにまた会えるのが嬉しかったですね。
■羨ましいぐらい不器用な市原隼人
―市原さんが演じたのは、温人(中村倫也)が唯一心を開くキーパーソンでしたね。
中村:市原くんとは同い年なんですよ。人間として役者としてタイプが真逆で楽しかったですね。褒め言葉ですが、羨ましいぐらい不器用だったんですよ。台詞だったり行動だったり、腑に落ちていないと動けない。(そういうときは)何回も監督と話したり、自分で現場で確認したり、それで腑に落ちたときはすごい推進力があるというか、それって大事なことだと思うんですよね。一緒にいて得ることも多かったし、もっと同じシーンがあったら良かったなと。
■頼もしくなった佐々木希は珍しい存在
―佐々木希さんは共演シーンも多かったですが、今回の印象はいかがでしたか。
中村:昔から知っているんですけど、頼もしくなったなと。おじさん目線になっちゃう(笑)。素直な普通の秋田の娘(こ)というか(笑)。すごく真面目だし。難しい役なんで、すごいなって思いました。
■「カメレオン俳優」と称されるワケは?
―今作はこれまで数々のCMを手がけてきた柳沢翔さんの初めての長編監督作品でした。現場はいかがでしたか。
中村:現場は濃密すぎて。どの作品でも初日に監督と匂いを共有するって大事だと思うんですよね。言葉で擦り合わせなくても同じ方向を向けるというのが、割と僕は早くできた気がしています。
―その順応できるスピードの速さが、どんな役にも染まる「カメレオン俳優」と言われる理由なのでしょうか。
中村:分かんないです(笑)。速いと思っていないですし。「カメレオン俳優」ってどういうものなのか。うーん、どの役も全部違う人物なので自分なりに真正面に向かい合ってやってて、いろんな役やるのが好きなんで、自分の思う関わり方でやっているだけなんですけど。分かんないですねぇ。色気があるとか言われる方が嬉しいですね(笑)。
■役者として10年。30代はどうなる?
―昨年、俳優として10年という節目を迎えましたが、この10年はいかがでしたか。
中村:人間として役者として若いうちにいろんな失敗をさせてもらったんで、それが良かったと思います。「何事も10年やってみろ」という先人の言葉がありますけど、10年やって見えてくることもあるし、10年やってさらに見えなくなることもありますし、面白いなと思いますね。この先の10年がどういう風になるのか、楽しみと不安が50、50ですね。
―今年は30代にも突入しますね。
中村:30代は試練のときかな。健康には気を付けないといけないですね。学生服からスーツ着て結婚の悩みを抱える役になってきて、そういうときに年齢を感じるんですけど、30代になったら子持ちとか離婚とか、あとは部下を持つ人とか。そういう風に役が変わってくるんだろうなと思うと、早く等身大でやってみたいなと思います。でも今の等身大をしっかりしないとその先もないと思いますね。
■美味しいラーメンかどうかは食べないと分からない!
―最後に今作を読者に紹介していただけますか。
中村:美しい映画です。観終わった後にきっとじんわりと何かが訪れる。人それぞれの感想を抱ける作品なのかなと思います。たとえば、美味しいラーメンかどうかはそれを食べないと分からないですよね。ちょっとでも興味があったら友達50人連れてぜひ映画館に足を運んでいただきたいです。(ちょっと間をあけて)30人でいいです(笑)。
ヘアメイク:松田陵
スタイリスト:戸倉祥仁(holy.)
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)