『ふなふな船橋』を執筆した小説家・吉本ばななさんがツイッターでふなっしーをはじめとするヒーローへの思いをつぶやいた。悲しい思いや辛い思いをした子ども達にはふなっしーやミッキーなどのヒーローが寄り添っていたのでは…。彼女はそれを伝えようと本作を書くことにしたという。
2014年4月15日、吉本さんは『吉本ばなな(y_banana)ツイッター』で『ふなふな船橋』の連載が翌年にも実現しそうだと明かし「梨の妖精臭を(笑)わずかに匂わせる程度ですが…」とつぶやいた。その後、2015年3月12日より朝日新聞夕刊で連載が始まる。
主人公の立石花は15歳の時に一家離散となり、千葉県の船橋に住む親戚の奈美おばさんのマンションに身を寄せる。彼女はお母さんと船橋の駅で別れるときに買ってもらった“梨の妖精 ふなっしー”のぬいぐるみを15年経った今も大切にしている。まだ花がおばさんのマンションへやってきて間もない頃、小さな女の子が出てくる不思議な夢を繰り返し見る。その子もまた“梨の妖精 ふなっしー”を愛する1人だった…。
物語はふなっしーが直接活躍するわけではないが、「梨の妖精臭」が随所に漂う。新聞の連載がこの秋、10月7日に単行本として出版され念願叶って帯をふなっしーが書いてくれた。
吉本さんは10月17日にツイッターにて、あるインタビューで両親が亡くなった時の悲しみについて聞かれたことから「ふなっしー抱き枕ぬいぐるみに顔を埋めて泣いたことがある」と振り返る。それをきっかけに、元気がない時や悲しい時にふなっしーが頑張る姿を見ると「涙が出るほど元気になる。そういう人もきっといっぱいいるはず」との思いを明かした。きっといろいろな悲しい事件で亡くなった子ども達にも「ふなっしーではないかもしれないけど、ミッキーやルフィやキティちゃんや、きっとそういうのが寄り添っていたんだ」と考えて、それを書こうと決意する。
そんな彼女の言葉に、今年お母さんが亡くなったというフォロワーから「悲しみに沈んでいた日々に、ふなっしーがテレビで元気にヒャッハーしてる姿をみて、心から楽しくなって笑えました」と体験が寄せられた。「ふなっしーみたいなものが寄り添う希望としてありますように、と本気で思っています」と吉本さんが願うように、子どもから大人まで多くの人がどこかでヒーローたちに救われている。
時には酒を飲みながら「ヒーローに憧れていたなっし…」とつぶやくこともあるふなっしーだが、その存在をヒーローと感じる人は着実に増えているようだ。
ところで単行本の出版が決まった時、吉本ばななさんは「どうしても帯を書いてほしくて、ららぽーとの“ふなっしーへの願い事”短冊を子どもと友だちと書きに行った」という。出版社を通してふなっしーに依頼しないところも凄いが、快く引き受けてくれたふなっしーも流石である。「“帯のギャラがもしもあるなら全額あしなが育英会に寄付してください”っておっしゃった」そうだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)