“観客はそれぞれ、一人が一個ずつ、なにか音の発するものを持参すること(サイレンは不可)” 一風変わった観客参加型のつながる音楽劇『麦ふみクーツェ』の公開ゲネプロが10日、東京・世田谷パブリックシアターにて行われた。ウォーリー木下の演出、世界からも注目を浴びるトクマルシューゴを音楽監督に迎え、舞台と客席、隣の観客同士、参加した全ての人が一つにつながる体験を味わうことができる舞台とは?
独創的な作風を得意とする小説家・いしいしんじ原作の『麦ふみクーツェ』が新しいかたちの音楽劇となった。主演に渡部豪太、脇は皆本麻帆、松尾貴史、尾藤イサオらベテラン、実力派たちが固める。
松尾貴史の指示のもと、持参した楽器を鳴らしたり、ドミソに分けて発声練習をしたり、音と声を自ら出すことで観客も観るだけではなく舞台で繰り広げられるキャストの一員となって楽しめるのが、本作“つながる音楽劇”の醍醐味であろう。
天井が高い舞台は1階から4階までの設定になっており、壮大なスケールに圧倒される。演技、合奏、脚本、音楽、美術細部に至るまでこだわりぬいたステージは、トクマルの言う「すごく色々な要素があるけれど、要素があるわりにすごく繊細な舞台で、何か一つが崩れると全てが崩れてしまう。一つが上手くいくと波にのって全てが上手くいく舞台」そのものである。
公開ゲネプロを終え、主演を務めた渡部は「3か月くらいかけて、“ここはこうだろう”とずっと稽古場でお客様のことを想定して作っていました。そこが上手く噛み合わないところも出てくると思うけれど、そこも楽しみながらみんなで波を作って大きな麦畑に到達したい」と意気込みを語った。初めて観客を前に演じて「もっと来いよ!と思いました(笑)」と、その反応やノリはまだまだこんなものではないと正直な気持ちを明かすと、観客に話しかける松尾も「本番はすごいことします!」と断言した。
また、それぞれがお互いに行動や仕草、言動をヘンテコだと思っていることも明かされた。オールキャスト・脚本・音楽監督が作り上げる、唯一無二の新しい“つながる音楽劇”を体感してみては?
―この世におよそ打楽器でないものはない。港町で“ねこ”と呼ばれる青年はヘンテコな楽団に出会った。それから起こるちょっとした悲喜劇。彼にだけ見えるクーツェとは一体何者? 「ボクの麦わらにあわせて奏でてごらん!」
■シアターBRAVA! 10周年記念シリーズ つながる音楽劇『麦ふみクーツェ~everything is symphony!!~』
・東京公演 2015年4月10日(金)から19日(日)世田谷パブリックシアター
・大阪公演 2015年4月23日(木)から26日(日)シアターBRAVA!
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)