高田延彦や安田美沙子がNHKのニュース解説番組『週刊ニュース深読み』に出演して献血の実態に驚いた。若者を中心に献血率の低下が指摘される昨今、このままでは2027年に約85万人分の血液が不足するというのだ。高田は献血率アップの対策として「ポイント制にすれば」と提案するが、売血の歴史がある中で導入は難しいとの意見もある。
NHK総合『週刊ニュース深読み』が2月7日の放送で“血が足りない!? どうなる?どうする?献血”をテーマに取り上げた。日本赤十字社が血液需要がピークとなる2027年に、献血者約85万人分の血液が不足するとの推計を公表したことを受けて、専門家や学生献血推進協議会関係者にタレントの高田延彦、安田美沙子らが意見を出し合った。
現状では、輸血用血液製剤の8割を使う高齢者が増え続ける一方で、若者の献血率が下がり続けている。献血率はこの数年で『10代で10.2%→6.4%、20代で9.7%→7.4%』と低下しており、国が2005年に献血構造改革を打ち出して“献血キャラクターけんけつちゃん”、“武道館での音楽イベント”、“秋葉原でカフェ風献血ルーム”、“俳句コンテスト”などを行っているが、2005年から2013年にかけて10代、20代、30代の各年代で献血率は下がり続けている。
番組が集めた視聴者の声から“献血に行かない”理由として『怖い』(「痛そう」、「運動が趣味なので、献血すると倒れそう」)、『時間が無い』、『よく知らない』(「ピアスを開けていたらダメだと言われた」)、『健康上の理由』(「貧血気味」)などがあがった。
高田延彦は「たいした理由で受けないわけではないんだね」と率直に感想を述べると、「ポイント制にすればいいのでは」とアイデアを出した。視聴者からもツイッターで「ポイント制にして景品などと交換できると献血するかも」という意見は複数寄せられている。しかし、一方で「自分の血液が人の役に立つということだけではダメなのか?」、「善意で行動ができない日本になってしまったのか。見返りがないと同じ国民でさえ助け合えないのか」などの反対意見も少なくない。
日本と同じように少子高齢化が進むイタリアでは“献血有給休暇”を導入している。献血に行く日は有給で休めることから20年ほどで献血回数や献血者数が増えた上に、定年後でも習慣化しているとのデータがある。高田はイタリアの取り組みを「これもお金ですよね。こういうことだと思う、モチベーションアップするには」と評価しており、安田美沙子も「お給料もらえるんですよね。これだったら、みんな献血に行きそうですよね」と前向きに受け止めていた。
学生献血推進協議会九州ブロック会長の前薗くるみさんからは、学生から献血について「どう使われているの?」「どんな人に?」といった疑問を耳にすることから『Thank youレター』の取り組みが進んでいることが伝えられた。病院との協力で輸血をした患者さんの声を手紙にして、献血ルームや病院内に張り出すものだ。輸血を受けた人による『Thank youレター』の一部も紹介された。
白血病で治療中の7歳の男の子による「元気にしてくれてありがとう。輸血をすると元気になります。早く歩くことができます。ごはんをたくさん食べることができます。みなさん、これからも応援してください」というものや、入院中の67歳男性が書いた「いつもたくさんの血液ありがとうございます。命を助けてもらっています」といった手紙を見て、実際に「自分の血液がこうして役に立てるのならば」と初めて献血した人もいるという。
「役に立つという実感。献血は“命のリレー”であることを実感する取り組みが必要」だとする意見に、安田美沙子も「素敵、確かに、自分の血が誰かに流れていくことを実感できると嬉しいですよね」と共感していた。前薗さんは「献血された方と輸血された方の橋渡しになれば」と、この『Thank youレター』の取り組みを行っていると語る。
愛媛県赤十字血液センター顧問の松坂俊光さんからは、献血についての教育の必要性が指摘された。彼は学校現場の声から「献血について学んだ学生は少ない」ことを感じており、自ら学校で“命の講座”を行っている。「献血について教える時間を義務教育、特に中学校に取り入れて欲しい」「10代で学び、20代で実践して、30代で子どもに見せて欲しい」と力説した。
国内外の血液事業に詳しい、東京医科歯科大学・大学院教授の河原和夫さんは、献血の取り組みに報酬を組み込んではいけない理由について説明している。「過去の例を見れば、献血よりも経済的な利益を得ることが目的化してしまう。昭和初期には献血のし過ぎで血液が薄くなったり、帰りに事故を起こしたりする事例もあった」と振り返り、売血、預血、献血への進化は日本が歩んできた道だという。
金銭的な動機付けによって過去に戻るのは避けるべきで、「献血した人には善意で返す献血率アップへの具体策」を示した。献血をポイント制にして、そのポイントを将来の自分の介護保険に転換して介護サービスに反映させるというものだ。他にも献血を観光とセットにするなどの案も出された。
そうした意見を聞いた上で、高田延彦が「ボランティアなので教育や善意であることを伝えるのは大切だが、2027年に85万人分の血液が不足するのに、今の取り組みで間に合うのか」と疑問をぶつけた。河原さんは「2030年くらいには高齢化に歯止めがかかるので、医療機関での輸血の適正使用や学校での教育、赤血球を集中してとる採血方法の工夫などによりかなり解消してくると見ている」と見解を述べている。
「2027年に85万人分の血液が不足」と聞けば絶望的に感じるが、献血率のアップと採血、輸血する機関による改善を今から進めればクリアできることに安心した。テレビでも、さらにこうした特集を増やして献血の現状を知らせる必要がありそうだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)