西田敏行が最新作映画『マエストロ!』で、下ネタ炸裂の破天荒な指揮者役を熱演している。西田といえば日本アカデミー賞をはじめとした数多くの映画賞に輝き、2008年には紫綬褒章も受賞した“日本映画界の顔”である。彼はこれまで個性豊かなキャラクターを演じ、見るものを時に笑わせ、時に感動させてきた。妖怪から幽霊、ヤクザ、そして人生を謳歌するサラリーマン役まで幅広く演じてきた西田敏行の、特に異彩を放ったキャラクターたちを今一度、振り返ってみよう。
国民的映画『釣りバカ日誌』シリーズで演じた“ハマちゃん”こと浜崎伝助役は愛すべきキャラクターとして知られる。仕事はそこそこにひたすら趣味の釣りに没頭し、家族や職場の同僚たちを振り回す文字通りの自由人だ。そのどこか憎めないキャラクターは西田の最大の当たり役となった。そんなハマちゃんの姿を見て、“あんな風に生きられたら楽しいだろうな”と思ったサラリーマンも多いはずだ。
また、アグレッシブに攻める西田は人間以外の奇抜な役にもチャレンジした。テレビドラマ『西遊記』の猪八戒役や、大ヒットを記録した三谷幸喜監督の『ステキな金縛り』では無念の死を迎えた落ち武者幽霊役をコミカルに演じている。クスッと笑ってしまう演技は西田のアドリブによるものが多く、この役を西田以外の役者が演じることが考えられないくらいのハマり役であった。
一転して北野武監督の『アウトレイジ ビヨンド』では凄みのきいたヤクザ役を演じ、俳優としての幅を見せつけ、温厚な西田のイメージを覆した。まさに西田が“日本映画界の顔”と言われる所以である。
最新作『マエストロ!』では、俳優人生初となる指揮者役に挑戦した西田敏行。彼が演じるのは破天荒なキャラクター天道徹三郎だ。経歴も素性も不明な謎の指揮者として登場する天道は、不況で解散した名門オーケストラを再結成させ、廃工場を使った練習場へ集める。松坂桃李演じる若きヴァイオリニスト香坂ら“負け組”楽団員たちはその破天荒なやり方に唖然とするが、やがて指揮者としての知識、経験、センスに引き込まれていく…。
余談だが、記者が“マエストロ”という言葉を知ったのは1997年にフジテレビの水曜劇場枠で放送されたテレビドラマ『それが答えだ!』を見てからだ。三上博史が演じる世界的なマエストロ・鳴瀬望がなりゆきで田舎の中学生に音楽を教えることとなり、12名の初心者によるオーケストラ部でタクトを振る。当時は今ほど知名度の無かった深田恭子や藤原竜也が中学生役で出演しており、その熱演に涙したものである。
そのドラマにより“マエストロ”は単にタクトを振って指揮をするだけの存在ではないことも分かった。今回の映画で西田敏行が演じる天道徹三郎は、まさに“マエストロ”としての力を存分に発揮している。その魅力から考えても西田のキャラクター列伝にまた1つ新しい歴史が生まれたと言えるだろう。
本作は“本格的音楽エンタテインメント作品”であるがゆえに、西田敏行は“天道徹三郎”というキャラクターを演じる他に一流の指揮をイチから学ぶ必要があった。初の指揮者役ということで撮影開始の半年前から練習を開始。世界的マエストロ、佐渡裕氏に指揮の心構えと実技を学び、佐渡氏自身による指揮の手本映像を参考にスタジオや自宅などで練習を積んできた。クライマックスの演奏シーンの『運命』、『未完成』での指揮は、破天荒なキャラクターとは程遠い繊細かつ大胆な指揮ぶりに誰もが感動するに違いない。
また、初共演となる松坂桃李演じる香坂をはじめとする楽団員たちとのぶつかり合いや、映画初出演となるシンガー・miwaとの掛け合いなど、クスッと笑ってしまう場面は西田ならではと言っても過言ではない。天道徹三郎は西田敏行だからこそ演じることができたキャラクターなのだ。
ようやく迎えた復活コンサート当日。誰も知らない天道徹三郎が仕掛けた本当の秘密が明らかとなる。笑いと涙が必至の映画『マエストロ!』は、2015年1月31日(土)より全国ロードショー。
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(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)