俳優・中井貴一と柳葉敏郎は昭和36年生まれ、同じ時代を生きてきた味のある役者だ。2人の演技は観る者をホッとさせる安定感がある。「話す必要がない」ほど心でのアドリブが絶妙の2人が熱演の映画イベントに登場し、生で「あうん」の呼吸を披露した。
新春7日、東京・銀座にて映画『アゲイン 28年目の甲子園』完成報告会見&大人の親子試写会が開催された。ゲストには、熱い男役にはぴったりの中井貴一と柳葉敏郎、晴れ着姿が眩しい波瑠、若手俳優として注目を浴びる工藤阿須加、そして大森寿美男監督が登壇した。
新春イベントとあり、全員が「2015年に挑戦したいこと」をテーマに書き初めが披露された。達筆すぎる中井と柳葉の書き初め(蓄積と舟出)に司会者から「いつも書いているのか」と質問が及ぶと、「小学校以来、30年振り。書かないでしょう、普通(笑)」と中井の回答に隣にいた柳葉も同調する。
親と子の人間模様を描いている本作にちなみ、“親”に対しての思いや父親との思い出を聞かれると、中井は「親は幹。子供は枝葉。子供が親に勝てることは一生ない。大きな壁に跳ね返されながら向かっていく」と語る。柳葉も「死ぬまで越えられない存在で目標。まだまだ自分は達していない。死ぬまで思い続ける。子供たちは俺たちの背中を見ていると実感している」と同じ気持ちでいることを口にした。
名優・佐田啓二を父にもつ中井貴一は、自身が2歳の時に父を亡くしたことから「直接、父親との思い出はない」と語りながらも「親父がいなかったから俳優をやっている。俳優をやりながら今、親父との思い出を作っている」と亡き父への思いを明かした。一方で2人の子供の父親となった柳葉は「一緒に妖怪ウオッチやっています」と目を細め、「親の気持ちが最近分かるようになってきた。いずれ感謝される親父になりたい」と父親としての横顔をのぞかせた。
父親に対する思い、考え方が似ている中井と柳葉は同世代だけあり、やり取りも友達同士のようである。「同じ時代を生きてきて暗黙の了解があり、ナチュラルに楽な気持ちで立たせてくれる」「心のアドリブがある。ニュートラルの大切なアドリブをスッと出来るのが同世代なのかな」と中井が言えば、「話す必要がない。いい気持ちになる空気の中で過ごさせてもらった」と柳葉も言葉を返す。いるだけで気持ちが伝わる、そんな空気が舞台上からも感じられるイベントであった。
青春なんて遠い昔の思い出。そう思っているあなたへ。遠い過去の青春の悔いを乗り越えていく映画『アゲイン 28年目の甲子園』。人生に新たな一歩を踏み出す勇気をくれる日本映画の傑作が誕生した。
映画『アゲイン 28年目の甲子園』は1月17日(土)全国ロードショー。
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)