ウィンタースポーツの大きな大会で、競技を終了した直後に選手がすぐにスキーやスノーボードを外し、自身の肩にかけてテレビカメラに映るようになったのはいつからだろうか。近年はスポンサー企業のブランドを効果的に宣伝する動作を、アスリートたちに学んでもらう“メディアトレーニング”なるものが存在するのだ。
スキーノルディック複合元選手でスポーツキャスターの荻原次晴氏が所属する株式会社スポーツビズには、有名アスリートがズラリと名を連ねている。最初はスポーツ関係の広告代理店だった同社がスポーツ選手のマネジメント部門を立ち上げたきっかけは、荻原氏が長野オリンピック後に引退し将来について思い悩み、知人だったスポーツビズの社長に相談したことから。「ウィンタースポーツをテレビの中で語る人間をやったら?」というアドバイスと同時に、同社がマネジメントを引き受けることとなったのだ。現在ではスポーツ文化人・現役アスリート合わせて、約40名が在籍しているという。
11月26日放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)の「芸能プロダクションSP」に出演した荻原氏は、スポーツキャスターの他に取り組んでいる仕事について説明した。
荻原氏は現役アスリートに向けて、“メディアトレーニング”としてインタビューされた時の答え方を指導しているという。彼によるとアスリートの多くはインタビューされるのが苦手で、特にオリンピックなどで超大物タレントがマイクを持って近づいてくると、緊張して話せなくなってしまうそうだ。確かに最近のオリンピックでは競技終了後にすぐインタビューされても、堂々と自分の言葉で分かりやすく話す選手が多いのは、このような訓練の賜物なのかもしれない。
また企業の広告塔であるアスリートはウェアや用具に付けられているブランドを、効果的にメディアに向かってアピールしなければならない。たとえばスキー選手の場合はゴールするとすぐにスキーを外し、自分の肩にかけてカメラに映るように心掛けている。また視聴者は動くものに目がいくので、雪が付着していなくてもスキーを手で撫でたり、ウェアや帽子のホコリを払うような仕草をしたりして、さりげなくブランドを強調し宣伝するそうだ。
日頃メディアにあまり注目されていない競技でも、オリンピックイヤーで特にメダル候補ともなると、競技会場の外でも急にインタビューされる場合がある。その取材の受け答えが好印象を持たれ、きっかけとなり、マイナーな競技でも世の中に広まるチャンスとなることもあるのだ。選手にはぜひマスコミを上手に利用していただきたい。
スポーツ選手は引退後の人生の方が長い。荻原氏のようにスポーツキャスターを目指すにしても、指導者の道に進むにしても、現役時代に受けた“メディアトレーニング”はきっと役に立つはずである。
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(TechinsightJapan編集部 みやび)