「流行る! 流行らせたい」の強い気持ちで、老若男女を笑わせ続けてきたCOWCOWの多田健二と善し。いまでこそ「あたりまえ体操と言えばCOWCOW」と言うほど誰もが知っている2人だが、20年という長い芸歴を振り返ると「泥水吸った期間が長かった」という。今の心境、そしてこれからのCOWCOWについて多田健二と善しの2人に話を聞いた。
■「ラーメンがお寿司に変わった」くらいのノリで決めた進路。
──おふたりは中高の同級生だったと伺っています。1993年のコンビ結成から現在に至るまで、改めてどんな思いがありますか?
多田:長かったですね。泥水吸った期間が長かったから余計に長く感じたんでしょうかね。19歳でデビューしたので今年で21年目になります。中3高3とクラスの皆でコントやって、高3になって初めて(善しと)2人で(コント)やりました。
高校卒業後はひとりでNSC(吉本興業の養成所)に入り、そこで相方を見つけるんだと思っていたという多田。よしもとに行くことを周囲にばらされるのを恐れ、善しには大阪のデザイナー専門学校に行くと嘘をつく。一方の善しは芸大受験に失敗し、偶然にも同じ専門学校に行くことになっていた。専門学校に願書を出す直前に多田から本当の話を聞かされた善しは、その場で「俺もよしもと行く(笑)」と急きょ進路を変えたという。「ラーメン食べに行く言うて『俺、お寿司の方が好きやねん』『じゃあ俺もお寿司でええよ』」みたいなノリだったと笑いながら当時を振り返った。
■20年分のネタは完璧に管理。いつでも披露できる状態で常にスタンバイ。
──11月に芸歴20周年記念盤としてCOWCOW CONTE LIVEシリーズの7作目が発売されます。20年というと、ネタの数も膨大になると思うのですが、どう管理されているのでしょうか?
多田:DVDを出してもらえるというのは有難いですね。みなさんには観てもらい、僕らは記録用として残る。小道具や衣装はお互い家に衣装部屋があって、そこで管理しているのでいつでも“あのネタ”と言われたらすぐに出来るような状態にしてあります。
■「これ流行るな! 流行らせたい!」
──「あたりまえ体操」の歌もそうですが、COWCOWさんの歌は一度聞くと頭から離れなくなりますよね。
多田:よく打ち合わせにも出てくる言葉なのですが「これ流行るな!」「流行らせたい!」というのがあります。みんなが真似したがるようなキャッチ―な物になるよう作り方は自然と心がけているかもしれないですね。
■トイレの便座の取り付けDVDから生まれた「あたりまえ体操」
──「あたりまえ体操」の歌ができたきっかけは、多田さんの家のトイレの説明書というのは本当ですか?
多田:以前住んでいた家のトイレにウォシュレットがついていなくて。ウォシュレット付きの便座を買ってきたんです。そこについていた取り付け説明DVDの中の説明の仕方がすごい「あたりまえ」だったんです(笑)。「便座を取り出して下さい。便座を便器の上に置いて下さい。穴にネジを入れて下さい。ネジを回して下さい。回らなくなったら完成です」というのをキッチリと説明している感じがすごい面白いなと思って。最初は説明をリズムもつけずにやっていたのですが、S-1バトルという映像だけのグランプリがあってコンビで出場することになり、相方が「あたりまえ説明書」を音楽にのせて「あたりまえ体操」みたいにしてみないかと言ったのがきっかけです。
■「あたりまえ体操」を世界共通の体操に。
──海外、特にインドネシアでの人気はものすごいものがありますよね。2020年の東京オリンピックで「あたりまえ体操」をやりたいということですが。
多田:あはははは(笑)。世界共通の体操にしたいんですよね。本当にみんなに笑われるんですけど。相方が言った時、普通なら「そんなん無理や」ってなるのですが、普通に僕は「なるほどな」って思えて。今月末に英語バージョンをまた正式にアップする予定なので2020年に向けて着々と準備をしている段階ですね(笑)。
■COWCOWの芸人人生を変えた小栗旬の一言。
──COWCOWさんのファンは小栗旬さん・山田優さん夫妻、岡田将生さん、オリラジの藤森慎吾さん、NON STYLEの井上裕介さん・石田明さんほか芸能界、お笑い界に大勢います。小栗旬さんが「COWCOWのDVDを持っている」という発言から「あたりまえ体操」のDVDの単体化が決まったというお話ですが。
多田:山田優ちゃんは個人的に僕たちのライブに観に来てくれていて、小栗旬くんも「僕もCOWCOW好きでDVDも持ってますよ」と『しゃべくり007』で言ってくれたんです。その一言が人生を変えましたよね(笑)。そこで僕らのDVDの売れ行きが伸びて「あたりまえ体操」の単体DVDを出しましょうってことになったんです。3本累計で12万枚売れて、皆さんに注目して頂きました。
■東野幸治の一言が「あたりまえ体操」の産声。
──では多田さんにとっての人生を変えた一言というのは、小栗旬さんの言葉なんですね。
多田:これはターニングポイントでした。一番最初に「あたり前体操」をテレビでやらせてもらったのは、『あらびき団』なんですよ。その時に東野幸治さんに「うわーええやん。COWCOWこれ売れたんちゃう?」と言ってくれたのが、「あたりまえ体操」の産声でした。そして小栗旬くんの「僕もDVD持ってます」が成長期ですね(笑)。
■嫁の一言がずしっときた。面白いネタをやってきた僕らのDVDが1本もない!
──善しさんの人生を変えた一言というのは何でしょうか?
善し:上京して4年くらい経ったある時、レンタルDVDショップに行ったんです。そうしたら色々なお笑いコンビや後輩もDVDを出しているのに、12、13年やっている僕らのDVDが1本もないんです。大阪時代は単独ライブもやっていたのに気が付けば(DVDが)1本もない。M-1にも出られない時期で、このまま行ったらヤバいんちゃう?という感じになりました。嫁にも「COWCOWのDVDどれなの?」と言われ、その一言に相当ダメージを受けましたね。ずしっときました。あれだけ面白いネタを作ってきたのに手にとる形で残せていないっていうジレンマが当時はありました。そういう意味で今回7作目のDVDを出せることは感慨深い。ライブをやってきて良かったなって思います。
■ライブをやり続け、いいDVDを出す。
──最後に今後やってみたいこと、挑戦してみたいことをお聞かせ下さい。
善し:ライブをやり続けていくことですね。ライブがお笑いの原動力になっているので、僕らはネタを作り続けながら物を生み出すということを続けていきたいです。
多田:単独ライブのために1年頑張って活動してお客さんに沢山来て頂いて、いいDVDを出す。これが毎年の目標であり、これからも続けたいですね。
「あたりまえ体操」で一躍有名になり、今では日本国内にとどまらず、海外でも絶大なる人気を誇るCOWCOWの2人だが、ここに至るまでには多田の言うように「泥水を吸うような」苦労があったはずだ。そんな彼らがステージで魅せる絶妙な間の取り方、何度観ても飽きないネタはファンを魅了してやまない。COWCOWが見せる最高の笑顔に観客も笑顔になり、ステージと客席が一体化する。COWCOWのライブシーンを収めたDVDは彼らの生きる証となる。これからもレンタルショップの棚にCOWCOWのライブDVDのシリーズが増え続けていくことを期待したい。
DVD『COWCOW CONTE LIVE 7 ~芸歴20周年記念盤~』
2014.11.5(水)on sale 発売元:よしもとアール・アンド・シー htttp://www.randc.jp/
特典映像 1.芸歴20周年記念!COWCOWが選ぶベストネタ!! 2.即興言気道-別バージョン 3.もじどうぶつ 韓国語バージョン -4.テトリス1 5.テトリス2 6.いろんなおしごと 7.凸凹のうた
書籍『ハイハイからバイバイまで 田島のおばあちゃんとぼくのヘンテコな二人暮らし』(COWCOW)山田善し:著
―絶賛発売中
今年一番のお笑い寄席『東京グランド花月』にも出演!
12月24日(水)・25日(木) 会場:明治座 ※COWCOWは24日(水)に出演 http://www.yoshimoto.co.jp/tgk/
(TechinsightJapan編集部 うめ智子)