今年だけで、もう100本以上のテレビ番組に出演しているという坂上忍。そのほとんどは俳優としてではなく、バラエティ番組に出演するタレントとしての仕事だったであろう。彼には「番組の制作者側が求めてくる“坂上忍像”の期待に応える」という信念があるのだが、最近その期待に沿うことは「自分にとってはリスクが高すぎる」と考えるようになったらしい。毒舌家、潔癖症、そして酒とギャンブル好きな面が取り上げられ面白がられているが、それが過度に強調されることに坂上は危機感を覚えているのだろうか。
4月27日放送の『ソロモン流』(テレビ東京系)では、坂上忍に約1か月密着した映像を公開。彼を子役時代から知る案内人の船越英一郎に、亡くなった自分の父に対する複雑な思いを坂上は赤裸々に語った。
3歳で劇団に所属した坂上は、6~7歳の時には母親から交通費を渡されて1人で仕事場に通っていた。中学までは配役オーディションに落ちた記憶があまり無く、演技力だけではないある作戦があったという。与えられた課題を他の子役と同じように演じるのではなく、ひと工夫加えることを常に心がけていた。「他の人と同じことをしても選ばれない」ということは、幼い頃から分かっていたと話す。母親が演技の練習相手になってくれたことも、全く無いらしい。現在坂上は140人の生徒を抱える子役スクールを経営しているが、今は親離れ子離れしていない親子が多いことに驚いている。子役であってもギャラをもらう立場であることや、本物の実力をつけて使い捨てされない子役になることなど、経験した当事者である坂上の指導は子供相手とは思えないほど厳しい。子役スクールをただの金儲けの道具だと彼が見ていれば、ここまで熱血指導をする必要は無いだろう。
新聞記者をやっていた坂上の父親は、「国語より小説を読め」「数学より麻雀を覚えろ」と大層風変りな人物だったようだ。小説家になるため新聞社を退職し、自ら出版社を立ち上げたが経営に失敗。出版社の倒産と元々の酒とギャンブル好きがたたり、父親は1億円の借金を背負い坂上家は窮地に陥る。その頃には母親に暴力まで振るうようになった父親と絶縁状態になり、坂上は1億円の借金を返済するためだけに子役を続けたのだ。
父親は一昨年、74歳で生涯を閉じた。酒とギャンブルを愛し、物書きに目覚めた今の坂上はあれほど憎んだ父そのものの姿だ。密着取材中の坂上は常に煙草を離さず、番組収録が後に控えていても外食先でビールや日本酒を頼んでいた。4月6日に千秋楽を迎えた坂上が脚本・演出の舞台稽古中も、缶チューハイ片手に演技指導を行っている場面があった。どちらも酔って呂律が回らなくなったりはしていないが、仕事中に酒を飲む行為は視聴者から好感を持たれないだろう。
過去の大物といわれる芸能人の中にも酔った状態で生放送や収録に現れた人物がいたらしいが、いずれも年月が経ってから明らかになっていることが多い。あのタモリも『笑っていいとも!』に酒が残ったまま出演したことがあると、最終回が迫ってから告白している。一方の坂上の酒にまつわる話はいつもタイムリーで、番組の宣伝にされているようで仕方がない。
取材中「業界の人にとっては、(僕に)めちゃくちゃやって欲しいんでしょ?」と、坂上は薄笑いを浮かべていた。酒が残った状態で番組に出るのも、キツい毒舌を吐くのも彼自身であり、自分が責任を取らなければならないのは十分に承知している。「下手したらテレビ出られなくなるのかな」と珍しく弱気な発言をした坂上はそれを恐れているからではなく、“覚悟はできている”というメッセージに記者には聞こえた。
(TechinsightJapan編集部 みやび)