2009年5月2日に亡くなったロックミュージシャンの忌野清志郎さんが、1988年2月より筆をとった手記が新たに発見された。その手記が長女・百世さんによる装画で完全書籍化され命日の5月2日に発売されることが決定した。1988年といえばRCサクセションのアルバム『COVERS』が発売中止となり話題となった時期だ。当時は30代だった清志郎さんに何が起きて、何を思ったのかを知る上でも貴重な一冊である。
忌野清志郎さんの未発表・書き下ろし新刊、『ネズミに捧ぐ詩』がKADOKAWAより5月2日に発売される。新たに自宅で見つかったノートを完全書籍化した私小説で、装画は愛娘の百世さんが担当した。
2006年7月13日に喉頭癌で入院することを発表して音楽活動を休止していた清志郎さんだが、一旦回復に向かった。2008年2月10日に日本武道館で『忌野清志郎 完全復活祭』を開催した時には、フィナーレにサプライズで長男の竜平(たっぺい)さんと長女の百世さんから花束が贈られた。当時、2人は19歳と16歳だった。父が残した手記に描いた百世さんの装画は、絵が好きだった清志郎さんの影響を感じる。
本書について「1988年2月、親父の死をキッカケに清志郎は筆をとる。実母への溢れ出る想いを、繊細かつ瑞々しい筆致で綴った詩と日記による私小説」と解説されているが、清志郎さんの実母は彼が3歳の時に他界した。また、彼の言葉によると「生んでくれた父親と、育ててくれた父親」がいるという。
目次の1つに「おふくろが死んだとき」という項目がある。3歳の時に亡くなった実の母の記憶は無いそうだ。育ててくれたお母さんが新聞に『高校生になる息子がギターばかり弾いてロックを歌っている。どうしたらいいでしょうか?』と悩み相談を投稿したことがテレビ番組で取り上げられて話題となったこともある。そのお母さんが“実母”について清志郎さんに伝えたことが彼の楽曲にも影響を与えたともいわれる。
1988年に発表したRCサクセションのアルバム『COVERS』(カバーズ)が当時の所属レコード会社東芝EMIから発売中止となった背景にはそんな出来事が関係しているのではないか。その真相は本書の発刊を待つしかないが、当時の清志郎さんがリアルタイムで思いを綴った文面から臨場感を味わえるはずだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)