視聴者からの投稿を受け付けるバラエティ番組『着信御礼!ケータイ大喜利』が、4月19日深夜に放送200回目を迎える。そんな節目を前に『ケータイ大喜利』の魅力について改めて考えてみたい。
2013年に出版された大見崇晴氏の著書『「テレビリアリティ」の時代』(大和書房)の「まえがき」では、「日本のテレビ文化は(出演者と視聴者との)双方向性に可能性を見出し、それを拡大させることで成功を収めてきた」と書かれている。大見氏は同書の中で、1953年に放送を開始した『ジェスチャー』(NHK)が「クイズ問題と回答者を視聴者から募集する番組」であった点に注目。また大見氏は『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(フジテレビ、1975~1980年)において、萩本欽一が視聴者からの投稿ハガキを3段階に判定するという「競技性を持たせたコーナー」を作ることによって「スポーツに似たドキュメンタリー性のある放送」となっていたと分析した。
『欽ドン』からちょうど30年が経過した、2005年に『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)がスタートする。これは出題される“お題”に対し視聴者が“携帯電話から回答”を行い、それを審査委員長の板尾創路がアンテナ1~3本および圏外の4段階で評価するという競技性の強い“視聴者参加型”番組だ。視聴者が大喜利の回答者役を担う試みは、松本人志によるバラエティ番組『一人ごっつ』シリーズ(フジテレビ、1996~1998年)内で行われたコーナー「お笑い共通一次試験」でも行われていた。これ以降の“携帯電話の普及”や“放送技術の向上”を受けて、『ケータイ大喜利』はなんと“生放送”で視聴者からの回答を受け付ける大喜利を実現させるべく放送を始める。
しかし放送開始当初の『ケータイ大喜利』は「システムトラブル」に直面してきたようだ。2008年発売の本『着信御礼!ケータイ大喜利』(太田出版)にその歴史が詳しく記されている。その本によると、はじめの頃は一瞬に投稿が集中することで「受付可能な許容量を超えて」しまいその結果システムトラブルになっていたそう。それゆえ番組内に“お題とお題の間にブレイクタイム”を設けていたそうだが、その一環で番組レギュラーの(お題を読み上げる)今田耕司と(回答を選定する)千原ジュニアが“カニ歩き体操”をすることもあったという。そんな試行錯誤を経て今では、1回の放送で寄せられる数十万件の投稿を“ブレイクタイム”なしで受け付けることができるシステムを『ケータイ大喜利』は確立している。
以上から『ケータイ大喜利』が、出演者と視聴者の“双方向性”を模索するテレビの歴史の中から誕生した番組であることがわかる。毎回数十万にも上る視聴者からの回答を生放送で受け付けるシステムを構築する裏には、スタッフの相当な苦労があったことは想像に難くない。また“問題を読み上げる今田”と“回答を選ぶジュニア”、そして“回答を評価する板尾”の3人が視聴者の回答をさりげなく引き立たせていることも番組が好評を博している原因だろう。さらに数十万の回答に目を通しジュニアが選びやすい数に絞る20人ほどの放送作家たちなど、様々な人たちの努力が重なった『ケータイ大喜利』は4月19日の深夜に記念すべき200回目の放送を迎える。
(TechinsightJapan編集部 TORA)