こんがり焼いたソーセージ、ベーコン、焼き肉…。どれも大好きという人は要注意。このほどある大学の研究チームがアメリカの有名なサイエンス誌において、肉料理と認知症発症との関連性を探る実験の結果を発表し、現代人の高カロリー食について警鐘を鳴らした。
肉中心の食事がもたらす体の細胞、血管、そして脳への影響について60歳以上の93人のボランティアとマウスで実験を行った、英「ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)」のデレク・ヒル博士とその研究チーム。ソーセージやベーコン、ステーキといったこんがり焼いた肉類は血管や細胞の老化を早め、なんと認知症の原因にもなり得ることを突き止めたとして、『米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)』誌に発表した。
今回の実験でヒル博士が注目したのは、“長寿遺伝子”と呼ばれるもまだ確証はないとされていたサーチュイン遺伝子の一種、「SIRT1」の不活性化がもたらす脳への影響であった。SIRT1を欠損させたマウスでは精神活動の低下が確認されたが、ヒトのボランティアにおいても、肉中心の高カロリー食を摂り続けることでこのSIRT1の不活性化が見られ、記憶障害などが出たという。肉の調理に関してはバーベキューコンロ、フライパンのいずれを利用しても同じ結果になったそうだ。これは、「サーチュイン遺伝子は空腹感と低カロリー食によって活性化される」との説を裏付けるものとなっており、ニューヨークにある「マウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)」の学者らも、「公衆衛生学上、より大規模な臨床試験を行ってみる価値を感じる発表だ」といった評価を添えている。
また今回の実験では、ケーキ、ペイストリー、クッキーのようにタンパク質に大量の糖質と脂質が加わる食品も、体に悪影響をもたらすことが改めて指摘された。こうした食品を過剰に摂取する生活習慣を続けていると血液中の糖分が多い状態が続き、体内のコラーゲンなどが「糖化(=グリケーション)」。さらに変性して最終糖化産物と化し、これが細胞の老化を早め、体調不良や病気の原因になってしまうという。糖尿病の合併症といわれる腎臓病や失明などもこの「糖化」が原因であり、最近では“抗糖化”を食生活のモットーとしているハリウッドセレブがぐっと増えていた。
肉は焼くことにより茶色く焦げるが、その段階で生成されるヘテロサイクリックアミンという物質に発がん性があることはこれまでも知られてきた。またアルツハイマーの発症や病気の進行にはタンパク質の「アミロイドβ」が深く関与しているが、肉や乳製品の摂取が脳内でのその凝縮を促進すると指摘されている。ジャパニーズフード、伝統的な和食の素晴らしさに改めて感謝したいところである。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)