日本では現在、「有効性」と「リスク」を理解した上で希望者のみが接種するというスタンスがとられている、子宮頸がん予防のためのHPVワクチン。イギリスではすべての少年に接種し、いずれは全がんの5%を撲滅させたいとする新たな取り組みが検討されているようだ。
若い女性がかかる「がん」の中で、乳がんの次に多いとされる子宮頸がん。ある種のヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因だとつきとめられ、ワクチンも誕生した。2009年には日本でもその接種が始まり、子宮頸がんの撲滅が大きく期待されたが、重篤な有害事象が報告されたことを受け、昨年6月に厚生労働省健康局は「接種の積極的な勧奨を一時中止する。希望する者は有効性とリスクを理解した上で接種を受けられる」と発表した。
そのような中、医療研究事業への寄付を行ってきた慈善財団のトップを務め、男性の健康に関するテーマで研究を続けてきたイギリス人医療ジャーナリストのピーター・ベイカー氏が、「ヨーロッパの国々でHPVワクチンをすべての少年に接種する」という新しい取り組みに向けた活動をスタートさせた。これには協賛したいと乗り出す人々も多く、ついには英国保健省も調査を始めたとして話題になっている。
具体的には毎年12歳の少年約367,000人がワクチンを接種すると、1本あたり7,400円として40億円ほどの費用がかかると試算するベイカー氏。しかし実際のがん治療にかかる医療費や国の財政負担はこの比ではなく、ワクチンの徹底により子宮頸がんばかりか尖圭コンジローマ、咽頭・喉頭がん、肛門がんほか、全がんの5%を撲滅できると説明。実際にカナダ、オーストラリア、アメリカではすべての少年少女にそのワクチンを接種しているため、「イギリスは出遅れている」としている。ただし保健省の中には、そのワクチンの普及により、アナルセックスに伴う各種の感染症や雑菌による肛門や直腸の炎症性疾患に対する警戒意識を薄める男性が増えるといった慎重論も出ているもようだ。
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(TechinsightJapan編集部 Joy横手)