ジブリの新作『かぐや姫の物語』のキャッチコピー「姫の犯した罪と罰」に監督の高畑勲氏は当初、反対していたという。このコピーを考えたのは鈴木敏夫プロデューサーだが、彼はどうやって高畑監督を納得させたのか。
キャッチコピー「姫の犯した罪と罰」は本作に絵本などで描かれる“かぐや姫”からは想像がつかないドラマが隠れていることを伝えようとしている。
11月26日に放送された番組『100秒博士アカデミー』に出演したスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーがこのコピーを提案すると高畑監督から「気品がない!」と一蹴されたことを明かした。
しかし、鈴木氏は「姫の犯した罪と罰」にこだわった。なんとか監督を説得しようと考えた彼は、まず「清く、凛々しく、美しく」という高畑監督が気に入りそうなコピーを作った。監督に見せると「これなら問題ない」と納得した。
そこで、今度は周囲の人々に2つのコピーを見せて意見を聞いたところ「姫の犯した罪と罰」が好評だったのだ。それには監督も意見を押し通すわけにいかなかったようで「勝手にやってください!」と不本意ながら承諾したのである。
鈴木氏が考えた「姫の犯した罪と罰」とは何を意味するのか。『かぐや姫の物語』は「単なるかぐや姫でない。それを一言で言いたかった」とキャッチコピーの意図を明かしている。
また『千と千尋の神隠し』では、鈴木氏がキャバクラが好きな友人の編集者から聞いた「新米のキャバ嬢は口下手でコミュニケーションをとるのが下手だけど、お客と会話するうちに明るい元気な娘に育っていくんだ」という話をしたところ、宮崎監督が「へー、そう」とヒントを得て主人公を発想したという。
『もののけ姫』のタイトルも宮崎監督は『アシタカ聶記』が良いと主張したが、鈴木プロデューサーが譲らず勝手に予告篇で『もののけ姫』を使用して押し切った。彼はその時「これを受け入れてもらえないならば、一緒にやる意味は無い」と覚悟していたことを明かした。
鈴木氏は「プロデューサーは作家(監督)に作品を作ってもらうのだから、何らかの形で意見は行った方が良い。『気分よく』作ってもらうためにヒントを出して本人に気づいてもらうことだ」と語った。言うまでもなく鈴木敏夫プロデューサーはスタジオジブリで宮崎駿監督や高畑勲監督にとってなくてはならない重要な人物である。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)