エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】ダイアモンド☆ユカイが証言。ロックフェス・BEAT CHILDの凄まじさを「BOØWYの髪も寝てたからね」

伝説のロックフェスを映画化した『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』の公開を前に、情報番組でも1987年の夏に熊本阿蘇のアスペクタで何が起きたのか特集された。その日、ステージに立ったRED WARRIORSのダイアモンド☆ユカイが凄まじかった会場の状況を振り返っている。

BEAT CHILDは、熊本県阿蘇郡久木野村(現・南阿蘇村)にオープンしたばかりの野外劇場・アスペクタで、1987年8月22日から23日にかけてオールナイトで行われたロックフェスティバルだ。

出演したアーティストはオープニングアクトのTHE HEARTから始まり、THE BLUE HEARTS、UP-BEAT、RED WARRIORS、小松康伸、岡村靖幸、白井貴子&CRAZY BOYS、HOUND DOG、BOØWY、THE STREET SLIDERS、尾崎豊、渡辺美里、佐野元春 with THE HEARTLANDといった当時の日本のロック・ポップ界を牽引するパワー溢れるメンバーだ。

TBSテレビ『NEWS23』では、“23文化部”でこのBEAT CHILDを取り上げた。また、FBS福岡放送の『ナイトシャッフル』にはRED WARRIORSのダイアモンド☆ユカイが出演して、当時の思い出を語っている。

天気予報では晴れるはずだったその日、BEAT CHILDが始まる前から一帯は暴風雨となり山を切り拓いた会場には水溜りができて泥地と化した。しかし奇跡的にTHE BLUE HEARTSとRED WARRIORSが演奏する間は、雨もあがっていたのだ。ダイアモンド☆ユカイは「俺たちの時は晴れていたので、みんな楽しんでいるようだった」と話す。

だがその後、雨足は強まる一方で観客はもちろん、ステージのアーティストもずぶ濡れでパフォーマンスする状況が続いたのだ。「BOØWYとかも髪の毛立てているのがみんな寝ちゃって、スライダーズ(THE STREET SLIDERS)だってそう」と語るダイアモンド☆ユカイ。彼は今回の映画化によって「本来の意味でバンドの魅力。カッコつけてない部分が見れる」という。

一方で、最も悪天候の影響を受けたのが白井貴子だった。彼女はステージに立つ前から、楽器が雨でやられないかを心配していたという。その悪い予感どおりに1曲目からギターの音が出なくなったのだ。現在50歳を過ぎた白井は、その時のことを「後ろのほうからかすかにピコピコとドラムとキーボードの音が聞こえて、それをたよりに歌った。あんなのは最初で最後だと思う」と証言する。

当時、学園祭やライブで大活躍してロックの女王と言われた彼女だが、若手の台頭もあり今後の活動について考えていた時期だった。そんな彼女が、体験したことも無いほどの最悪のステージに立ったのである。しかし、そんな状況だからこそ吹っ切れた。ほとんど聞こえないバンドの音を背に「みんな、大丈夫かーい!」と、笑顔で呼びかけながら歌う『Chance!』に迷いは感じられなかった。

白井貴子は「裸一貫で出直そうと思っていたところだったので、あのライブで何も無くなった時に『ああ、これでいいんだ』と思った。清々しささえあった」と懐かしそうにあのステージを思い出す。そして彼女は、BEAT CHILDを「日本人による日本人のためのロックフェスとして歴史に刻まれた、歴史的な1日だった」と語る。

そんなアーティストと共にBEAT CHILDを歴史的なロックフェスにしたのは、約7万2千人の観客たちだ。当時、会場にいた女性は「本当に自然との闘いで、雨が上からではなく左から右に降るような状況」とその悪天候の凄まじさを証言する。彼女はその時のパンフレットを大切そうに開くと、「一生に一度あるかないかの素晴らしいアーティストが集まるというのが、一番の元気の源でパワーになったと思う」という。

観客たちの状況はアーティストも心配していた。しかしその場では、主催者やアーティストも「最後までやり切ろう」という意志で一致していたのだ。観客もその意気込みに応えた。だが、ダイアモンド☆ユカイが「この時のイベントに参加したお客さんには、二度と野外フェスには行きたくないと思った人もいると思うよ。それくらい凄かった」と振り返るように、しばらくは悲惨な体験として記憶に残った者もいただろう。

救いだったのは、トリを務めた佐野元春のステージで雨が上がって青空が見えてきたことだ。そのシーンでは大自然に囲まれた会場を埋め尽くす観客が盛り上がっており、最高のロックフェスに見えたのである。

悪天候の環境でBEAT CHILDを貫徹したのは、当時の社会情勢だから可能だったという意見は多い。今の世の中では、危険行為として責任を追及されることは間違いないだろう。しかし、ほぼ原野に近い会場を整備して、当時では難しかった所属事務所やレーベルの違うアーティストを集めた関係者、そして最悪な状況でもロックを届けたアーティストとそれを受け止めた観客の姿は今見ても熱いものを感じる。

映画『ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD 1987』は、26日から全国で公開されている。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)