今月、『AneCan』などで活躍する人気モデル・押切もえが著書『浅き夢見し』で小説家としてデビューを果たした。現役の人気モデルがタレントや俳優に転身したり、商品をプロデュースしたり…そのような話はよく聞くが、小説を執筆するというのは押切が初めてとのこと。一体どんな思いで執筆したのだろうか。彼女の“小説家”という新しい顔に迫るべく、Techinsightが本人に取材を行った。
「嬉しいです!」。小説を出版した感想を笑顔でそう述べた押切。8月7日に書き下ろし長編小説『浅き夢見し』を発売したばかりだ。インタビュー当日の押切は私服だというオレンジピンクのブラウスにネイビーのショートパンツというスタイル。柔らかく明るいブラウスの色に映える小さな顔、キラキラと輝く目、スラッと伸びた長く美しい脚、そして質問にハキハキと答える姿が印象的である。
■執筆は試行錯誤の繰り返し
──本作の執筆には構想も含め、約3年かかったと聞きましたが。
押切もえ(以下:押切)「はい。エンディングをどうするか、一番悩みました。実は昨年の夏に一度書いたのですが、結局、変えました。読むことで、救われたり笑顔になれる作品にしたかったので、書き直したエンディングではそうなったと思います。小説の執筆は初めてのことなので書き方がまったく分からなくて小説家の方にアドバイスをもらったりもしました。自由に書いていいと言われて最初は400ページも原稿を書いてしまい、それを256ページに減らしたんです。」
──なるほど。執筆には相当苦労されたようですが、お忙しい中、どのように進めていったのでしょうか。
押切「仕事の移動中に書いたこともありました。途中から区切りで締切日を決めてもらいました。それからは、区切りごとに編集の方に意見や感想を聞きながらスムーズに進められるようになりました。でも最後の方はスケジュール的に厳しかったですね。」
──もともと書くことはお好きだったのですか?
押切「そうですね。苦ではないです。書いた方が楽なときもあります。おしゃべりも大好きなのですが、言いたいことを伝えようとして口が追いつかなくてメールにしてしまうこともあるぐらいです。書くことは私にとって“救いのツール”です。」
■読んだ人が綺麗になる小説を
小説『浅き夢見し』の主人公は25歳の売れないモデルの女性。モデルとして活躍したいと願うだけで、前向きに行動できずに挫折ばかり。そんな主人公が自分を奮起させ、気持ちも行動もポジティブに変えていく。現役人気モデルだからこそ書けるモデルの世界の舞台裏も話題である。
──作品中ところどころに美しくなるためのノウハウやダイエットのコツが出てきますね。
押切「自分にしか書けない小説をと考えたときに、読んで綺麗になる本にしたいと思いました。たとえば男性の作家さんでも取材をすればモデルの舞台裏を書くことはできると思います。でも、こういう美容ネタは、男性の作家さんは書かないだろうと。」
──そのあたりは“押切さんらしさ”が出ているとも言えますね。
押切「そうですね。『これだったら出来そう』と皆さんに思っていただけたら嬉しいですね。」
■モデルという職業について
──モデルを目指す主人公のリアリティあるエピソードがいくつも出てきますが、これらは実体験ですか?
押切「すべてが実体験ではありませんが、自分が『CanCam』に初めて掲載された頃を思い出して書いた部分もあります。ただ、自分と重ねすぎるとエッセイになってしまうので、どうフィクションとして展開していくか悩みました。」
──この小説を書くことでモデルという職業について改めて客観的に見られたのではないですか?
押切「まさにその通りです。皆さん強い精神をもってやっているなと感心しています。ステージの上では100%自信があって輝いている人でも、実際には悩むこともあるでしょうが、一流の人ほどそういう悩みを見せずにそれを乗り越えてやっています。モデルの仕事はプロとしては13年目ですけど、新鮮な気持ちでやりたいなと初心に帰りました。これからもモデルを中心にいろいろと活動していきたいですね。また、モデルという職業は、見られることで自分を磨き続けられる良い仕事だと思います。できるだけ続けられたらいいですね。」
■『浅き夢見し』を出版して
──小説を出版されて、反響はいかがでしょうか。
押切「これまでに出版したエッセイとはまた違い、皆さんそれぞれの熱のこもった感想をいただけるのが私にとってご褒美です。」
──モデルではなく他の職業の人にも、この主人公と共通することがあると思うのですが。
押切「そう思います。すごく一生懸命やっているときでも人間関係で悩んだり。なにかうまくいかないときは悪いことが続いたり。そういうことってどんな職業にもありますよね。モデルの世界を舞台にしていますが、それ以外の職業の人でも共感してもらえると思います。」
──では最後に、皆さんへメッセージをお願いします。
押切「時間をかけて一生懸命書いた本ですので、ぜひ皆さんに読んでいただきたいです。男性でも楽しんでもらえると思います。各章の間にポエムが入っているのですが、そこだけでも読んでもらったり、いろいろな楽しみ方をしていただきたいです。」
そうインタビューを締めくくった押切だが、早くも第2弾の構想も頭の中にはあるようだ。内容は、今回の『浅き夢見し』の続編ではなく、まったく別のものを考えているとのこと。この夏には浴衣を着て、花火を眺めながらバーベキューを楽しみたいというが、現在著書のサイン会などで多忙を極めている様子。プライベートを満喫できる日はもう少し先になるのかもしれない。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)