ロックバンドのBUMP OF CHICKENが、テレビ番組のインタビューで楽曲へのこだわりを語った。4人で東京ディズニーランドに行って楽しんだエピソードなども飛び出して、彼らの意外な一面を知ることができた。中でもボーカルの藤原基央が明かした楽曲を生み出す苦悩は、メンバーの直井由文も「すげえな」と改めて感動したほどだ。
メジャーデビューしてから13年目となるBUMP OF CHICKENは、今年の7月3日に初のベストアルバム2枚を出した。彼らの名を一躍知らしめたのは、2001年3月にリリースした3rdシングル『天体観測』だろう。7月5日に放送された朝の情報番組『ZIP!』のコーナー“SHOWBIZ BRAVO!”では、めったにテレビ出演をしない彼らがインタビューを受けて、その『天体観測』のヒットを素直に喜べなかったことを明かしたのだ。
ベース担当の直井由文は『天体観測』が大ヒットした時に、「僕らの今までと何が違うんだろう」と疑問を感じたという。その時のライブツアーでは、なんと『天体観測』をあえて演奏しなかったのだ。「とがっちゃって」と彼は当時を思い出して苦笑すると、「プロデューサーから『どの曲も平等に思うならば、“天体観測”もやらないとおかしいだろう』と怒られた」ことを明かした。それでも内心では不服だったそうだ。コンサートではヒット曲をメインに演奏するのが一般的だが、そういう考えを行動に移せるところが彼らの魅力なのかもしれない。
ついこの間は、4人で東京ディズニーランドに行って夜まで楽しんだという。夜のアトラクション“エレクトリカルパレード”を見て、両手を振りながら藤原基央も「ミッキー!」と叫んではしゃいだそうだ。しかし「誰にも気づかれなかったよね」と、4人は顔を見合わせるのだった。
直井は「すみません、スター性みたいなものが全く無いんです」とそんな自分たちを語ると、ギターの増川弘明とドラムの升秀夫が「あまりスターという自覚も無い」、「変わろうとしなかったわけでもない」と続けた。藤原は「幼稚園から一緒の幼なじみなので、それが大きいかな」と話している。彼らが自然体でやってきた結果が、今の雰囲気をつくりあげているのだろう。
「背中を押してくれる歌詞が好き」、「落ち込んだ時に元気をくれる前向きな歌に助けられた」とBUMP OF CHICKENの魅力を語るファンは多い。彼らは楽曲にどんな思いを込めているのだろうか。藤原は一番生み出すのに苦労したエピソードとして、「『ロストマン』(2003年)という曲は、思い出したくも無いんですが」と語り始めた。
「作詞に9か月もかかって、毎日ノートとにらめっこでいっぱい文字を書いてそれっぽくできるんですけど、何かこれ違うなって感じでもう1回書き直して」と藤原の生々しい描写を聞いた直井は、「すげえな」と感動を口にした。藤原が作品を生み出す過程は、他のメンバーも詳しくは知らされていないようだ。
藤原は『ロストマン』を書き上げた当時を語り終えると、「必要なだけの時間がかかって、作家として通過しなけりゃいけないところだったのかな…と今は思います」と懐かしむように振り返った。
そんな彼は曲作りにおいて「子どもの頃に習ったような歌が、ある程度年をとってから凄く勇気になったり、支えになったりすることがある。そういう風に機能したらいいと思っていて…僕らの曲は主役じゃなくていいんです。『聞いてくれたあなたの人生の隅っこの方に置いといて』みたいな感じです」と語っている。『ロストマン』での経験を思えば、実に説得力のある言葉だ。
直井はデビュー当時からの音楽への思いを、「一番最初の『ガラスのブルース』という曲から“人に伝えたい”という気持ちがすごくでかい」と話す。「4人だけで音楽やって楽しければそれで人生もすごく楽しめると思うが、僕らの場合は生まれてきた曲は“人に届けるために生まれてきた”もので、そこだけはずっと変わってない」と一貫しているのだ。彼の言葉を噛み締めるように、藤原も「そこは大事にしていきたい」と共感していた。
そんな彼らの12年間の思いが詰まったともいえるベストアルバム『BUMP OF CHICKEN I』『BUMP OF CHICKEN II』には、インディーズ時代の楽曲も収録されている。彼らは「自分たちでは選べない」と選曲をスタッフにまかせたという。どの楽曲にも平等に思い入れがあるからこそ、選べなかったのだろう。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)