ミュージシャンの佐野元春がテレビ番組『ZIP!』に出演して、ソングライティングや音楽との出会いについて語った。彼がテレビ番組に出演することは珍しいだけに貴重なトーク内容となった。
「テレビは持ってない。ラジオも最近は無いね」と驚きの日常生活を明かした佐野元春。6月28日の情報番組『ZIP!』で馬場典子アナと対談した彼は、日頃聞くことができない内容を予定時間を大幅にオーバーするほど熱く語ってくれた。
滅多にメディアに姿を見せない佐野元春は、馬場アナからその理由を尋ねられて「呼んでくれないから」と答えて笑わせた。そもそもテレビを見ない彼にとって、テレビ出演は活動の中心ではないのだろう。「情報はどうやって得るのか?」と問われると、「あまり情報は必要ない。必要なのはビタミンCとEだね」という独特の世界観を持つのだ。
そんな佐野元春が音楽に目覚めたのは小学校の頃だった。音楽の授業でレコードを聴く時間があり、彼はその時に流れたクラシック音楽を覚えて家に帰ってからピアノで真似てみた。「うまくはいかないけど、なんとなく形になってくるんだよね」と彼は当時を思い出す。台所にいた母親が、彼が弾くピアノを聴き褒めてくれたそうだ。毎回褒めてくれるため「うれしくて熱が入った」ことで、彼は音楽に興味を持つようになる。
他の授業は基本的に嫌いで、学校の成績表の備考欄には「情緒不安定」と書かれていた。授業が退屈なので窓から外を見るどころか「窓の外にいってしまう」タイプだったらしい。
やがて24歳でデビューした佐野元春は数々の名曲を送り出すが、それらを生み出す彼の基盤には学校時代に培った感性があるのではないか。
彼は「自分の体験をそのまま曲にすることはない」という。「ソングライティングは作家的な部分でもあり、物語を組み立てるもの」、「最初に映像が浮かんできて、自分の前に映画のように流れる。それを客観的にみて言葉やメロディに“翻訳”する感じ」と創作の流れを語った。
名曲として今も人気のあるシングル「SOMEDAY」を出したのは1981年のことだった。東京に生まれ育った彼は「自分が10代を生きた東京の街。そこで起こるいろいろな出来事を書こうと思った」と話す。彼の目の前に当時の東京の映像が流れて、それを歌にしたものなのだ。
今や日本の代表的なミュージシャンとなった佐野元春だが、「ハッピーな時は、曲ができてからの15分間」だと明かす。「それを初めてバンドメンバーに渡すときは屋根に上って“できたよー!”と叫びたいほど嬉しい」らしい。大きな成功を手にしても根っからのアーティストなのである。
今年でデビュー34年目となる佐野元春は、11月にアルバム『SOMEDAY』の収録曲を全曲歌う“名盤ライブ”を開催する。表題曲の他にも「Happy Man」や「DOWN TOWN BOY」、「Rock & Roll Night」といった名曲が並ぶ。彼がそれらを生み出す時に、どんな映画を思い浮かべたか想像するとより楽しめそうだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)