上地雄輔がアーティスト遊助としてリリースする12枚目のシングル「檸檬」についてブログで思いを綴った。表題曲の「檸檬」をはじめ4曲が収録されているが、一時はどれを次のシングルにしようかと迷ったほど愛情をかけた楽曲たちである。彼が“息子”と呼ぶ楽曲の中で、「檸檬」はもしかすると日の目を見なかったかもしれないのだ。
2月27日にリリースされたシングル「檸檬」について、遊助は「デザイン、サイズ、手に持つ感触、音の1個1個、歌詞の文字形態や行間や隙間に、全部が全部にこだわったつもり」と、その日のブログ『神児遊助』で触れている。
同シングルには「檸檬」、「In the rain」、「花とあれ」、「卒業生より」の4曲が入っており、当初は同時に出さずにアルバムや次のシングルにすることも考えたようだ。「出し惜しみするのが面倒くさい性格なんで、本当に全部突っ込みました」と笑いながら裏話を明かす。
表題曲の「檸檬」はTBS系ドラマ『終電バイバイ』の主題歌となっており、すでに耳にした方も多いだろう。遊助がこの曲を作詞したのは2年以上前のことだった。彼が「甲子園を見ながら途中、目をつぶって両耳を指でふさいで想像した」というのが、男の子が草原の中で四方を高い壁に囲まれて、大事な何かを持ちながら体育座りで背中を丸めている情景だ。
そんなイメージからできた「檸檬」を翌年の春か夏に出そうと思っていたが、2011年3月11日に大震災が起きたことでリリースをやめたのである。遊助は「どうしても変えたり削りたくなかった歌詞があったから」とその理由を説明すると、「檸檬」にある「乗り越えた壁は波や風よけ、これからもずっと守るよ」がそれだと明かしている。
昨年のライブで一度だけ歌ったことはあるが、「ドラマの関係者の方が主題歌にしてくれて、背中を押された感じです」とシングルリリースに至った経緯を綴る。「あなたの人生のスパイスや甘酸っぱい経験が今後の盾になるよう、全てを込めたエール」というのが「檸檬」に込めた思いなのだ。
今年の3月11日で東日本大震災から2年が経つ。震災直後には被災地や全国の心を痛めた人々を思いリリースを断念したが、今は逆に「檸檬」を人々にエールとして届けられる時が来た。遊助の決断がなければ、「檸檬」はシングルとして世に出ることがなかったかもしれないのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)