1970~80年代を代表する二枚目俳優の草刈正雄(60)。長身で甘いルックスの草刈は多くの女性を虜にし、美男子の代名詞のような存在とまでになった。しかしこの強烈なイメージが中年といわれる年代にさしかかった時、俳優としての彼を大きく苦しめる要因になってしまったのだ。
草刈は地元の福岡でスカウトされ17歳で上京、すぐに資生堂専属モデルとしてデビューした。瞬く間に売れっ子モデルとなり、22歳の時には俳優として映画デビューを果たす。下積みはほとんど経験せずに、スターへの道を駆け上ったのだ。
11月29日放送の『スタジオパークからこんにちは』(NHK総合)にゲスト出演した草刈は、人気絶頂だった当時は自分の俳優としてのキャラクターに反感を覚えていたことを明かした。
正統派二枚目を前面に出す役柄の仕事が、山のようにきていたのだ。役者としてのテクニックがあれば、同じ二枚目でもそれぞれ違うパターンで演じることができただろう。だが、草刈は「当時は演技力も無かったので、とにかく設定された役を壊すことばかり考えていた」と話す。例えば都会的で知的な刑事役なのに、わざと泥臭くしてみたりコミカルに演じてみたりする。物語の中では必要な設定であるのに、勝手に変えてしまいやりたい放題だったという。その頃を草刈は「スタッフは何も言わなかったけど、脚本家の方は相当迷惑していたと思う」と振り返っていた。
しかし、彼が27歳の時に主演したNHKのドラマで、共演した大女優の沢村貞子から忘れられないアドバイスをもらったそうだ。
「あなたは見てくれが良いからね。人の二倍三倍と腕が達者にならなきゃダメよ。」
人は年を取れば若い頃より、容姿は衰えてくる。その時に役者が勝負できるのは演技力。「沢村さんは“今のうちに勉強しておきなさい”と仰られていたんだと思います」と語る草刈。だが、休む暇も無いくらい仕事が忙しかった当時の彼は、俳優として現場で経験を積むことしか方法が無かった。そうして月日が流れ草刈が中年といわれる年代になると仕事は激減、ついには全く俳優としての仕事が無くなってしまったのだ。
「“氷河期”が長かったですね」という草刈だが、役者を辞めようとは思わなかったそうだ。最近は演技を楽しむ余裕が生まれたとのこと。また、年齢を重ねたことで仕事の幅が広がったようで、最近はNHKの美術評論番組で進行役を務めている。
今の草刈正雄は、年を取ることでさらに素敵な男性になったように感じた。
(TechinsightJapan編集部 みやび)