今月27日、ロンドンオリンピックが無事に開幕した。この時期ロンドンには世界中から観光客が集まり、商売に携わる人にとってはまさに“かき入れ時”となるが、その賑わいと相反するかのように、オリンピック競技場のあるロンドン東部ニューハム・ロンドン特別区で80の売春宿が、ロンドン警視庁によって閉鎖された。
イギリスでは売春は法律で許可されているが、売春宿の運営は禁止されている。そのため今回の取り締まりについてロンドン警視庁は、決してオリンピックのために行われたものではないとしている。しかしロンドンの市長Boris Johnson氏が以前からオリンピックに向け、ロンドンの売春そしてそれに関わる人身売買を撲滅するという方針を公式に打ち出していたため、今回の取り締まりがオリンピックと結びついている可能性は高い。
ニューハム・ロンドン特別区は以前から売春だけでなく麻薬密売やその他あらゆる犯罪の温床となっていたため、警察のこの取り調べに対し住人の多くは喜びの声を上げている。この地区はイスラム系やバングラデシュからの移民が多く住む地域であり、特にイスラム系移民達には、数か月前に同地で行われた売春及び人身売買組織撲滅のための捜索に協力したという経緯もある。
だがロンドン東部でソーシャルワーカーとして売春婦のケアを担当する女性は、閉鎖を命じられた売春宿の運営者は、結局ロンドンの他の地区で同じように宿を経営することになるであろうから、取り調べの意味は余りないのではないかと語る。また売春宿の運営は法律に違反しているとはいえ、売春婦にとっては怪しい客から自分たちを守る砦のような存在となっているため、宿がなくなることで同区の売春婦達にとっては、むしろ普段よりも危険に直面する可能性が高くなるのではないかと懸念している。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)