呪術師の怪しげな儀式により、母親の生まれ変わりの娘がいると思い込むようになったことから、自分の生まれ故郷であるルーマニアから赤ちゃんを誘拐した40歳代の女と協力した50歳代の夫に対する裁判が、チューリッヒで行われた。
事の発端は2009年にまで遡る。スイスのウスターで精神科医として働くルーマニア出身の女は当時、精神疾患に苦しめられていた。その後、心酔していた呪術師による儀式によって現実と空想の境目が曖昧になってしまった女は、生まれ故郷のルーマニアに、既に死亡した自分の母親の生まれ変わりである“娘”が存在すると思い込むようになったのだ。
女は夫との間に息子が2人いたが、母親の生まれ変わりである“娘”を迎えに行くと決意し夫に報告。この思いつきを拒否すると離婚に発展することを恐れた夫は女に同意し、2009年10月、一家はルーマニアのティミショアラに向かった。
ティミショアラにある小児専門病院で女は赤ちゃんを盗み出し、外で待つ夫が前もって開けていた柵の穴から脱出、その後すぐにスイスに帰国した。帰国後間もなく夫婦はこの赤ちゃんを、養子ではなく実の子供として役所に偽の出生届を提出している。
だが、ルーマニア警察による捜査で犯行が明らかとなり、同年12月に夫婦は逮捕された。2人に対する裁判はスイスで行われていたが、今月23日にチューリッヒの上級裁判所にて行われた裁判で、この行為は非常に厚顔無恥で自分勝手なものであるとされ、女に懲役3年、男に懲役2年の判決が言い渡された。
誘拐された赤ちゃんはその後、ウスターから無事ルーマニアの両親の元に返されている。その際、この赤ちゃんにまつわる一連のニュースを知ったウスターの裕福な一家から、見舞金として5万フラン(約410万円)が贈られたという。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)