タレントのコロッケが、GWの5月3日から福岡で行われた『博多どんたく港まつり』に参加した。彼はその前夜祭でもモノマネ芸で会場を笑いに包んでくれたのだ。また、昨年、東日本大震災が起きた2週間後にボランティアに訪れた時の体験を語ると観客も聞き入った。
コロッケがトップクラスのモノマネタレントであることは、誰もが認めるところだろう。そんな彼が子ども時代から貧しい暮らしや病気に負けずに、母親の“あおいくま”の教えをうけて芸能界で成功するまでのエピソードがテレビ番組で紹介されたことがある。
5月2日に福岡国際センターで開催された『博多どんたく港まつり前夜祭2012』には、多くの地元団体やHKT48やHRなどのアイドルグループも出演して盛り上げたが、やはりメインとなったのはそのコロッケによるステージだった。
観客席に降りて老若男女のリクエストに応える彼のサービス精神は、会場を一体にしていった。苦労してタレントになり、さらに長い芸能生活を送ってきた彼だからできることだろう。やがて前夜祭も終盤に入ると、最後のステージでコロッケは「3.11から2週間後に被災地にボランティアに入りました」と語り出したのである。
海岸線を歩いて石巻へ向かった彼は、被災状況を目の当たりにして「神様はいないのかな? いるのだったらなぜ1日前に教えてくれなかったのかな?」と怒りがこみ上げて自らを責めたという。だが、石巻へ入ったコロッケは予想もしない光景を見ることとなったのだ。「そこにはたくさんの神様がいたんですよ」と彼は話す。自衛隊員や警察官、消防隊員をはじめ自身が被災者であり家族の行方も分からない人々が、他人の心配をして助け合っている姿に感動したのである。
コロッケたちもボランティアでうどんを炊き出しすると、すぐに1000人を超える人々が並んだ。700人ほどに配った頃に小学3年生くらいの男の子がうどんを受け取った。するとその男の子はそれを食べずにゆっくりと注意して運び、道路を越えた先に座るおばあさんに渡したのだ。コロッケが気になって見ていると、男の子は300人ほどの列の最後にまた並んだのである。「ああ、かわいい神様だな」と感心したコロッケは、男の子がうどんを食べ終わるのを待って声をかけてみた。「うどんをあげたのは、知っているおばあさんなの?」と尋ねると、彼は「知らない。あのおばあさんは足が悪いからうどんを取りに来られないんだ」と答えたのだ。「そっか、えらいね。おじちゃんたちが気づかなくてごめんね」とコロッケは思わずその子を抱きしめた。
「でも僕を知らないみたいで、大きな顔のおじさんに抱きつかれて嫌そうでした」と話すと会場から小さな笑いも起きたが、多くは涙をふきながらそんなコロッケの体験を聞いていたのだ。
コロッケはミュージシャンのさだまさしに頼んで、アルバムの収録曲である『いのちの理由』を自身のシングルとして昨年の9月にリリースしている。その歌をステージの最後に披露したのだが、歌詞に多用されるのは“私が生まれてきた訳は”というフレーズだ。彼が被災地での体験からこの曲のリリースを思い立ったと考えると、その歌声がいっそう胸に響いたのである。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)