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writer : shiina

【EU発!Breaking News】芸術作品?それとも単なるラクガキ?芸術見本市で行われた興味深い試みとは。(独)

一見何をテーマとしているのか理解できない、ラクガキのような絵画やガラクタのようなオブジェが、不思議なほど高額で取引される―現代芸術の世界でよく目にする光景である。そんな状況に一石を投じるかのような興味深い試みが、ドイツの大衆紙『Bild』の編集者によって、ケルンで開催されていた国際芸術見本市で行われた。

今月18日から22日までケルンで開催されていた国際芸術見本市『Art Cologne』。200もの画廊やディーラー、そして芸術家が参加し、期間中訪れた人の数は約6万人、そして展示されていた作品の価格は最低でも1000ユーロ(約10万6000円)はするというから、その盛況ぶりをうかがい知ることができる。

この見本市で『Bild』の編集者が行ったのは、自分が作成した“作品”を見本市の空きスペースに展示し、それに対する観客の反応、そして一体どれほどの価値が提示されるかを観察するというものであった。といってもこの“作品”、60センチ×80センチのキャンバスにアクリル絵の具で『Das ist KUNST(これは芸術である)』と書かれただけのもの。これを架けたイーゼルを2件の画廊ブース間にあるわずかなスペースに設置していたのだが、一体どのような反応があったのだろうか?

全ての観客とはいかないものの、立ち止まってじっくり眺める人、議論を始める人、写真を撮影する人など、この“作品”に興味を感じた人はそれなりにいたようだ。

その反応は、「これはとても挑発的な作品ですね。キャンバスに言葉だけというシンプルさが新しい」と話す画家や、「この作品には何千ユーロもの価値がありそう!」と大絶賛する芸大生がいたかと思えば、「作品としては面白いけれど、私が払うとしたら30ユーロ(約3200円)程度かな」と話す女性客、そして「こんな価値のないもの、僕ならタダで持って帰るよ」と痛烈に批判した芸術家など、実に様々であった。

こうした現代芸術の状況をからかう、いや、一石を投じるかのような試みに対し、主催者から何かお咎めがあったのではないかと気になるが、Art CologneのディレクターDaniel Hug氏はこれについて「こうしたアクションは、現在の芸術作品の売買状況を熟考するよい機会となるものです。それに、こうしたことを楽しむのもまた芸術の一環ではないでしょうか。とにかく、非常に面白い!」と賞賛している。

また以前のArt Cologne責任者で、現在は画廊を運営しているGérard Goodrow氏も、「この試み自体がパフォーマンスアートのようなものです。これに至るまでの過程が独創的であり、芸術的ですから」と絶賛しており、この作品をなんと500ユーロ(約5万3000円)で購入してもよいと話している。

一体どんな“作品”なのか、そして本当にその価値があるものかどうかは、こちらのサイトにある写真でご確認を。
http://www.bild.de/news/inland/art-cologne/bild-schmuggelt-jux-gemaelde-auf-art-cologne-23756598.bild.html
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)