芸術か、それともガラクタか。一般的な芸術作品とは遙かにかけ離れたイメージを持つ現代芸術作品であるが、ドイツ西部の街ドルトムントの美術館で掃除の際に、そうした作品の一部が掃除係によって取り除かれてしまったことが明らかとなった。
被害にあったのは、ドルトムントのオストヴァル美術館に常設されている、現代芸術家マルティン・キッペンベルガーの『屋根から雨漏りが始まる時』という名のついたオブジェである。この作品は、細長い木の板が塔のように組み合わされ、下部にはゴム製の桶が取りつけられているのだが、位置から見ても作品の一部とはっきり認識できるこの桶を、掃除係が先月20日、掃除の際に取り除いてしまったのだ。
オストヴァル美術館では掃除を外部の会社に依頼しており、契約の際には、掃除は作品から最低20センチメートル離れた場所で行うように説明していた。当然、展示作品そのものを触ったり掃除することは禁止しているが、それにもかかわらずこうした事態となってしまったことに、掃除会社が社内での説明をしっかり行っていなかったのではないか、と美術館の関係者は話している。
関係者は同時に、美術館に展示されている作品に無断で手を触れ、しかもその部品を取り除くなど説明するまでもなく禁止行為であるはずなのに、そうした常識を理解できていなかった掃除係の行為が信じられないと、憤りを隠せないでいる。
幸いそれ以外の目立った損傷はないため、この作品は再び展示されることとなるが、作者であるキッペンベルガーは1997年に亡くなっていることもあり、完全に元通りに修復された作品を目にする機会は、残念ながらもうなくなってしまった。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)