長い年月を森の中で放浪しながら暮らしていたという1人の少年が、今月初め、ドイツの首都ベルリンに現れた。市によって保護されたこの少年は自分自身に関する情報を、名前などいくつかのことを除いては全く知らないと話している。
今月5日にベルリンの役所に姿を現したこの少年が自分自身について知っていることといえば、名前が『Ray』であることと、長年にわたり父親と共に森の中で暮らしていたことだけで、自分がどの国から来たのか、いつから、そして何故森の中で生活するに至ったのかなど、全く分からないのだという。
少年自身の申し立てによると、彼の母親は遙か昔に交通事故で亡くなっており、物心がついた時には既に父親と2人で、森の中を放浪し、父親が所持するテントで寝泊まりするという生活を始めていた。
こうして少年は長い間、父親と共に森の中で暮らしていたが、2週間ほど前この父親が亡くなった。少年は森のどこかに父親の遺体を埋めた後、コンパスが指す北の方角に行けという父親の生前の指示に従い歩き続けた。そうしてたどり着いたのが、ベルリンであった。
当然、少年は身分証明となるようなものは所持しておらず、またドイツ国内のみならずヨーロッパ中の行方不明者の捜索願の中に彼が該当するものもなかったため、警察による捜査でも彼の出自は明らかとなっていない。少年はドイツ語が少しだけ理解できるものの、主な会話は英語ですることが、彼の出自に対する推測を混乱させている。
長年の放浪生活にもかかわらず、少年の健康状態は良好であるという。少年の申し立てと医師の診察から推定17歳と判断された彼は青少年保護のための施設で生活をしており、ベルリン市は現在、未成年である彼の保護者になりうる人を探している。
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)